研究課題/領域番号 |
20K16892
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀之内 智子 神戸大学, 医学研究科, 助教 (30754593)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小児特発性ネフローゼ症候群 / NPHS1 / 自己抗体 / HLA class II |
研究実績の概要 |
小児特発性ネフローゼ症候群(INS)は、我が国で年間1000人程度新規発症し、小児慢性腎疾患のなかで最も頻度が高い指定難病である。小児INSの80~90%はステロイド投与により寛解を得られるステロイド感受性ネフローゼ症候群(SSNS)であるが、その約50%は頻回の再発を認め、ステロイドや免疫抑制薬による持続的な治療を要する。また、成人期に移行する難治例も存在し、その場合QOLの著しい低下を認める。SSNS発症や再発に、インフルエンザなどの感染や虫刺症がきっかけになることはしばしば経験され、SSNSは何らかの免疫学的な刺激を受けて発症する多因子疾患であることが疑われてきたがその本質は未だ不明である。そのような中で申請者らは、本邦の小児SSNS患者を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、HLA class II risk/protective alleleの存在と、腎糸球体スリット膜の重要構成因子であるネフリンをコードするNPHS1が疾患感受性遺伝子であることを明らかとした。HLA class IIは従来、B細胞やマクロファージ・樹状細胞などの抗原提示細胞に発現していると考えられてきたが、急性炎症などの免疫学的な刺激の存在下では各臓器に異所性発現することが知られている。我々は小児SSNS発症にこのHLA class IIの異所性発現が関わっている可能性に着目し、以下の2点に着目して研究を行っている。 1) 各HLA alleleとネフリンのcDNAを細胞にトランスフェクションし、細胞表面へ抗原提示を行うその強さを比較する。 2) 患者血清を用いてHLAとネフリンの複合体(ネオ・セルフ)に反応する自己抗体がないか探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 各HLA alleleとネフリンのcDNAを細胞にトランスフェクションし、細胞表面へ抗原提示を行うその強さを比較する。 現在分かっているHLA DR/DQの各risk/protective alleleに関して、それぞれネフリンとともにトランスフェクションし、ネオ・セルフ複合体の細胞表面への発現の強さを比較したところ、risk alleleの方がprotective alleleに比してネフリンを結合しやすいことが明らかとなった。 2) 患者血清を用いてHLAとネフリンの複合体(ネオ・セルフ)に反応する自己抗体がないか探索する。 1)で得られた細胞実験系を用いて、さらに患者血清を反応させることで、その血清中の抗体を検出することを試みている。現時点では患者血清中に自己抗体を同定できていないが、今後症例数を増やして行う予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
2) 患者血清を用いてHLAとネフリンの複合体(ネオ・セルフ)に反応する自己抗体がないか探索する。という点に関して、さらに症例数を増やして施行する。また、HLAとネフリンの複合体に限らず、網羅的に自己抗体を探索することを試みる。
3)マウスの各MHC class IIとネフリンのcDNAを細胞にトランスフェクションし、より細胞表面へ抗原提示しやすいMHC class II alleleを同定する。 HLA class IIの異所性発現によるネフローゼ発症に関するマウスモデル作成のため、マウスのネフリンを提示しやすいマウスのMHC class II alleleを同定することで、疾患感受性アリルを同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に購入を予定していた研究室関連消耗品が新型コロナウイルス感染症の影響で年度内に納品不能であったため、2021年度に購入を予定している。
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