研究課題
STXBP1脳症では、Munc18-1のハプロ不全によりシナプス関連蛋白質であるSTX1Aの膜への輸送障害が起こり、シナプスの開口放出障害が引き起こされるという仮説をもとに、細胞内輸送に関わるMunc18-1の新規相互作用因子の検索を行なった。その結果中枢神経に豊富に存在するモータ蛋白質MyosinVaが同定され、マウス脳の内在性蛋白質を用いた免疫共沈降実験や初代培養海馬神経細胞における免疫染色で、Munc18-1との共沈降および共局在を確認した。今年度は、HEK293細胞を用いたタグ付き蛋白質の免疫共沈降実験にて、MyosinVa、Munc18-1、STX1Aのternary complexを確認し、さらに、MyosinVaのdeletion mutantを用いた共沈降実験では、Munc18-1はMyosinVaのN末端側で結合していることが明らかになった。またshRNAを用いたNeuro2A細胞におけるMunc18-1KD実験では、STX1Aの膜への局在が減少し細胞内に凝集することが示され、さらにMyosinVaをKDするとSTX1AのみならずMunc18-1も同様に膜への局在が減少し凝集が起こることが確認された。またMunc18-1およびMyosinVaのKDによるSTX1Aの局在異常は、それぞれのレスキュー実験により回復することも確認できた。以上の結果より、STX1Aはそのシャペロン蛋白質であるMunc18-1と結合した状態でモータ蛋白質であるMyosinVaによって膜へ輸送されている可能性が高く、Munc18-1やMyosinVaのハプロ不全により起こるSTXBP1脳症やGriscelli症候群が共に知的障害やてんかんを引き起こす機序として、両者がSTX1Aのようなシナプス関連蛋白の膜輸送に重要な役割を果たしていることを示唆する結果が得られた。
すべて 2021
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Human Molecular Genetics
巻: 30 ページ: 1337~1348
10.1093/hmg/ddab113