研究課題/領域番号 |
20K16899
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
坂田 飛鳥 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90528457)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インビボイメージング / 血栓形成 |
研究実績の概要 |
本年度,溶血性尿毒症症候群モデルマウスにおける血栓性状のインビボイメージングによる観察,並びに生体外で血栓形成を確認するモデルを用いて赤血球が血栓に与える影響を確認した. 病態モデルのインビボイメージングで観察される血栓はvWFシグナル陽性,フィブリンシグナル陽性の繊維状血栓であった.今回観察したタイミングでは血小板シグナルが陰性の部分があり,フィブリンがどのような条件下で形成されるのか(血小板介在下あるいは非介在下で形成されるのかなど),今後観察を予定している. アグルチニンによるグリコカリックス染色では微量なグリコカリックスを染色するためにアグルチニンを増量すると,アグルチニンそのものが血栓形成に影響を与え,一方で少量のアグルチニンで観察を行おうとすると,インビボイメージングで褪色などの問題を回避しえなかった.今後のグリコカリックスの評価法を現在検討中である. 血栓形成のシグナルとしては活性酸素刺激による血管内皮からのvWF放出惹起などを検討し,vWFの異常放出のみではHUSに特徴的な血栓が形成されないことを確認した. 生体外での血栓形成を確認するモデルではマイクロ流路を用い,そこにボランティアから採取した血液で再構築した試験用血液を流した.貧血状態,多血状態,赤血球の無い状況など種々の条件で検討を行い,赤血球が血栓に与える新規の役割を明らかとした.本結果は2022年に行われる国内学会で発表を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グリコカリックス染色目的に使用しているアグルチニンそのものが病態モデルでは血栓に大きな影響を与えることが判明した.血栓の同時観察には不適と考えられ,今後の打開策検討の必要がある. 一方で生体外での血栓形成観察を通じた赤血球が血栓に与える影響の観察では当初予想していたよりも大きな成果が得られてきており,今後検証を加速させたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
生体外での血栓形成観察を繰り返し,定量データを取得する.学会発表後の論文報告を目指す. インビボイメージングでは血栓形成刺激後の血栓形成過程を時間を追って観察することで,病的血栓形成のメカニズムを明らかにする. アグルチニンによるグリコカリックス観察は投与法の改良などで改善が出来るかを検討する.解決が難しい場合には血栓との同時観察を行わず,病態モデルマウスの別個体を用いて血栓とグリコカリックスの観察を別々に行う方策や,血栓をインビボイメージングで確認した後,病理標本でグリコカリックスを評価出来るかなどを検討する.
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