研究実績の概要 |
小児骨肉腫のゲノム不安定性が相同組み換え修復機能の異常によるものと考えて、BRCAnessを指標としてこの機序の関与の説明を試みることを目的に、小児骨肉腫症例の腫瘍組織に対するSNPアレイを用いた解析を実施した。コピー数異常に着目した各種スコアリング(LOH, TAI, LST)でBRCAnessの強弱を調べた。 先立って行った骨肉腫5例を含む53例のAYA世代肉腫の全エクソームシークエンス解析の結果に対してのこれらのスコアリングでは、LOHスコアとsignature 3(BRCAnessと関連する変異シグネチャーとされる)が最も強い相関関係にあった (LOHスコア>4の例において、相関係数0.70) ため、以後の検討ををLOHスコアを用いて行う方針とした。小児骨肉腫20例のSNPアレイのLOHスコアはBRCA1/2が正常の乳がんより高く、BRCA1/2が不活性化した乳がんと同等の水準であることが示された。 SNPアレイでのコピー数解析では、染色体レベルでは1p, 8q, 17p amplification (>4 copies) および3p, 6q, 20p loss (<2 copies) が見られた。遺伝子レベルではPRKDC, CCNE1, RAD21, MYC, COPS3, FLCN amplificaiton (>30%に認めた) が、RB1, TP53 loss (>20%) が高頻度に見られた。これらの結果は既報の結果を支持するものであった。 今回検討した小児骨肉腫20例のSNPアレイによるコピー数解析・BRCAnessに関する検討の結果を第62回日本小児血液・がん学会学術集会で報告した。
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