研究実績の概要 |
ミクログリアの観点から早産児脳室周囲白質軟化症(PVL)の病態解明: 仔ラットを用いて, 細菌感染を模倣したLPS投与と低酸素・虚血負荷の組み合わせにより惹起されるPVLモデルを確立し, その表現型と病理組織像, サイトカイン・神経伝達物質の動態をもとにミクログリアの病態形成と脳発達への影響について明らかにする. 結果1: 新生仔ラットにLPS腹腔内投与と片側頸動脈結紮・切断, 低酸素負荷の2段階処置を行い, 2段階処置後の新生仔ラットを母獣ラットが育児することを確認した。 結果2: 感染・低酸素虚血の2段階刺激(LPS投与, 生後の低酸素・虚血負荷)を受けた新生仔ラットは片側頸動脈結紮・切断, 低酸素負荷のみの群に比較して, 脳のHE染色, KB染色における脳組織損傷の程度が重篤化しやすい傾向を確認した。しかしながら, 仔ラットの個体数によって発育体重のばらつきがあり, 脳重量へ影響している可能性が考えられた。母獣の育児を考慮すると, 1回あたりの飼育数を揃える必要があると思われる。 結果3: 妊娠母獣ラットにLPS腹腔内投与を行い, その妊娠母獣ラットから生まれた新生仔ラットに頸動脈結紮・切断, 低酸素負荷を行うプロトコールでは, 児の脳の組織学的影響のばらつきが多く, 安定した実験を行うことは困難である。 結果4: In vivo 実験を模して, LPSならびに低酸素, 神経伝達物質で刺激したミクログリアの炎症・抗炎症動態を明らかにする. 新生仔ラット脳からミクログリアの初代培養の確立, LPSによる炎症性サイトカイン産生の上昇, 神経伝達物質ノルエピネフリンのLPS同時投与にて炎症性サイトカイン産生の抑制を確認した. 低酸素刺激では, 炎症性サイトカインの産生は抑制された. 炎症性サイトカインはIL-1β, iNOSであり, mRNA, 蛋白いずれも同様の動態であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の実験プロトコールは, 妊娠母獣ラットにLPS腹腔内投与を行い, その妊娠母獣ラットから生まれた新生仔ラットに頸動脈結紮・切断, 低酸素負荷を行い, 成長後にその新生仔ラットの脳を組織評価, 神経伝達物質の変化, 行動学的評価を行うものであった。しかしながら, 新生仔ラットの致死率, 体重, 脳の組織学損傷にばらつきが生じており, プロトコールを変更した(妊娠母獣ラットに処置は加えず, 生まれた新生仔ラットにLPS腹腔内投与と頸動脈結紮・切断, 低酸素負荷を実施している)。
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