研究課題/領域番号 |
20K16918
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
伊藤 尚弘 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (90791905)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / 経皮免疫療法 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究は経皮感作後にナノ粒子を経皮的に投与することで新規の経皮免疫療法の確立・病態解析による他のアレルギー疾患への応用を目的としている。 一年目では経皮免疫療法の確立を目標としていた。準備段階で経皮感作によりアレルギーモデルマウスを作成する必要があるが、従来通りの3回経皮感作させるマウスでは、一回目の負荷試験の際に体温低下が強く出るようになった。そのため、ナノ粒子による影響を受けにくくなってしまったと考え、感作回数を減らしたり、感作部位を少なくしたりとアレルギーモデルマウスの確立に時間を要した。その結果、従来通りの方法では感作だけで2か月を要していたが、感作範囲はそのままとし、感作回数を2回に減らすことで準備期間を短くすることに最終的に成功した。 ナノ粒子の塗布について、これまで粉末をグリセリンを含む液体に溶解してから塗布していたが、これまで望ましい結果が得られなかった。また、今後応用にあたり初めから液状のものを塗布する方がよいと判断し、複数の試薬を用いて検討し、その中で最も皮膚の炎症を惹起しない組成の特定に至った。 上記ナノ粒子の性状の変化に加え、具体的に塗布する部位に対する介入を模索した。ナノ粒子の塗布部位はこれまで、マウス用シェーバーで剃毛していたが、シェーバーによる皮膚への刺激が逆に感作してしまっている影響を考え、マウスを麻酔して鎮静した後にハサミで丁寧に毛を除くように試みたところ、これまでよりは体温低下が緩和した結果を得ることができた。 1年目は残念ながらここまでで修了してしまったが、準備期間の短縮が可能となり、今後回数を重ねて再現性が得られるか、より良いデータが出るようにできるかを検討していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記経過報告にも記載を行ったが、1年目で経皮免疫療法の確立を目指していたが、その準備段階の確立に時間を要し、確立した新規の経皮免疫療法の確立に至っていない。 しかし、これまで1グループの感作から免疫療法まで2-3か月程度要していたが、この一年で感作期間の短縮に成功し、実験期間が短縮することで多くの実験ができることが期待できる。また、ナノ粒子の塗布について蛍光標識した作成に成功すればナノ粒子の投与部位を耳から行うか背部の皮膚から行うか決めることができ、投与部位も確立すれば大幅に進捗状況は改善すると考えられる。 また、科研費とは別の実験で成果を出し、Allergyにacceptされたが、そちらにeffortを割いていた事情もある。そちらの実験については、2021年4月にacceptされており、今年度は本研究により専念できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで短期間の塗布であったが、感作期間が短縮し経皮免疫療法にかける時間を確保できるようになったため、治療効果が得られる期間を長期化して効果を確認する。 治療効果が得られれば、兼ねてから検討していた短鎖脂肪酸やVitAなどの物質をアジュバントとして治療効果を増強させることができるかを確認する。 上記の治療効果に対して、病態解明のため皮膚組織、腸管リンパ節などの組織を回収し、好酸球や肥満細胞数の変化を解析する。さらに、RT-PCRによりマスト細胞、好塩基球の活性化マーカーであるMcpt1、Mcpt2、Mcpt8などのmRNA発現を測定する。また、血液中のOVA特異的IgG1、IgG2、IgA、IgE値の変化をELISAで測定する。 免疫療法の確立後は、所属リンパ節及び腸間膜リンパ節のリンパ球サブセットの変化をフローサイトメーターで測定する。Tregとしては、CD4+CD25+Foxp3+細胞、CD4+LAG3+Foxp3-細胞以外に、制御性B細胞のマーカーとされるCD5+CD20+細胞の割合を測定する。これらの細胞以外に経皮免疫療法により増加する細胞群が同定された場合は、その細胞群を分離して、他の食物アレルギーモデルマウスに輸注することでアレルギー症状の抑制効果が得られるかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
267,364円あり。 経皮免疫療法を行う準備段階に時間を要したため。
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