研究課題/領域番号 |
20K16919
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
後藤 美和 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (70327576)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 低出生体重児 / 慢性腎疾患 / ミトコンドリア / GDF15 |
研究実績の概要 |
低出生体重児は、慢性腎臓病となるリスクが高いことが知られているが、その機序についてはいまだ不明な点が多い。本研究では主に障害をうける糸球体上皮細胞がミトコンドリア機能の影響を受けやすい細胞であること、慢性腎臓病を発症した低出生体重児の腎組織ではミトコンドリア機能に関連した蛋白の発現低下が観察されていことから低出生体重児の慢性腎臓病とミトコンドリア機能異常に関連があるのかという点を解明することを目的とした。これまでの研究で、早産低出生体重児を対象に、血中および尿中のGrowth Differentiation Factor-15(GDF15)を測定した。GDF15はミトコンドリア病の診断マーカーでもあり、低酸素、酸化ストレス、炎症、組織傷害などにより産生されるストレス応答性サイトカインである。早産低出生体重児40例、対照症例30例を比較検討した結果、早産低出生体重児群では、対照群と比して有意に血中GDF15値が高値であることが示された。ベースラインとなる推定糸球体濾過率、血圧、肥満度については有意差を認めなかった。これまでの先行報告において、血中GDF-15のレベルは腎内GDF15転写物レベルと有意に相関していることが成人の検討から報告されており、腎臓におけるGDF-15発現の亢進は、初期の腎障害に対する保護反応としてとらえられている。また、血中GDF15値の上昇は推定糸球体濾過量低下の予測因子であることが報告されている。成人の多数の報告も踏まえると、早産低出生体重児群は腎機能低下のリスク群であり、この群においても血中GDF15値が今後の腎機能の予測因子になる可能性が示唆される結果であった。一方、尿中GDF15値に関しては、症例数を増やした結果、対照群と比較して早産低出生体重児群で高い傾向はなく、むしろ優位に低い結果となった。この結果の理由についてはさらなる検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
早産低出生体重児群および対照群の症例数が予定数より少ない状況である。令和3年度までは新型コロナウイルス感染の流行による医療機への受診控えにより登録症例数が減少していた。令和4年度については対象となる早産低出生体重児の数が少なく引き続き新規症例数が少なくなっている。 動物実験については、新型コロナウイルスの第7.8波による施設る様々な制限によりその進行にかなりの遅れがでている。
|
今後の研究の推進方策 |
目的1である、小児期から若年成人期に達した低出生体重児における酸化ストレスおよびミトコンドリア病バイオマーカーの変化と糸球体上皮細胞障害の関連に関しては、調査期間を延長して対象の組み入れを継続して行っている。対象となる低出生体重児の受診は、そのほとんどが7月から8月に集中する。今年度、新たに組み入れた対象に関しては、迅速に検査を進め、研究期間内に評価を行いたい。尿中落下ポドサイト数については、現在real-time PCRを用いた評価方法を検討しており、研究方法の確立を早急に進める。 目的2の、子宮内発育遅延のモデル動物における糸球体上皮細胞のミトコンドリアおよび腎機能の解析に関しては、動物実験の開始が遅れている。現在の計画では子宮内発育遅延のモデルラットが研究期間内に明らかな腎機能低下までには至らない可能性がある。そのため、研究方法の一部の変更を予定している。また、現在のエフォートを増やして対応することを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年まで新型コロナウイルス感染の流行による受診控えがあったこと、令和4年度は対象となる低出生体重児が少なく、研究に遅延が生じている。新型コロナウイルスの流行による様々な制限から動物実験の開始に遅延が生じたため当該助成金が生じている。研究期間の延長を行い症例数の追加と動物実験を進めることを予定している。
|