在胎週数37週未満でかつ出生時体重2500g未満の低出生体重児(LBW群)と正期産でかつ出生体重が2500g以上の対照群(Control群)において血中および尿中のGrowth Differentiation Factor 15(GDF15)を測定しLBW群の腎機能障害とミトコンドリア機能異常に関連があるかについて検討した。GDF-15は、ミトコンドリアストレスの刺激により循環中へ放出されることが報告されている。またGDF15は、正常細胞に比してミトコンドリア病細胞での遺伝子発現量が多く、ミトコンドリア病患者の血清において有意な上昇がみられることから、ミトコンドリア関連疾患の新規バイオマーカーの一つとなっている。成人では血清および尿中GDF15は独立した慢性腎臓病(CDK)進行のリスクマーカーであり、患者の生存期間と負の相関を示す。本研究では、まず、LBW群とControl群の血清および尿中GDF15の違いについて検討した。その結果、腎機能は両群間に有意な差がないものの、Control群と比べてLBW群で血中GDF15値が有意に高く、LBW群では血中GDF15と尿中GDF15が相関するという結果が得られた。Control群では、血中GDF15と尿中GDF15の相関は確認されなかった。腎ストレス下において、尿中GDF15は腎組織内のGDF15発現と相関することから、本研究におけるLBW群の血清GDF15の上昇は、腎ストレスによる腎臓組織内のGDF15の発現増加を反映していると推測される。また、LBW群における血中および尿中GDF15の上昇がLBW児のCKD進行の予後マーカーとして利用できるかについて検討した。その結果、血中GDF15が高値の患者の一部で、持続した糸球体濾過量の低下が観察された。今後、長期フォローを行い血中・尿中GDF15値が低出生体重児の長期の腎予後のマーカーとなりうるか、またそのカットオフ値の検討を行う必要がある。
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