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2021 年度 実施状況報告書

ファージディスプレイ法を用いた新生児低酸素性虚血性脳症に対する新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K16922
研究機関滋賀医科大学

研究代表者

樋口 明日香  滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (90613480)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード低酸素性虚血性脳症 / 新生児
研究実績の概要

新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する治療用ペプチドを用いた新規治療法を開発すべく本実験を行っている。昨年度はRice-Vannucci法によりHIEモデルができることを確認した。そこで、本年度はHIEの重症度の条件検討を行った。
HIEモデルマウスは、新生仔マウスの左総頸動脈の血流を遮断した上で低酸素暴露を行うが、その際の環境温度とHIEの重症度、マイクログリアの集積性との相関性に関する検討を行った。低酸素チャンバーの温度設定を36.0℃、36.5℃、37.0℃とすると、患側では健側に比べ、線条体で63%、37%、34%、海馬で34%、12%、7%と、有意に組織の萎縮を認めた。さらに、環境温度が高温となるほど、運動機能障害、高次脳機能障害は重度となり、患側へのマイクログリアの集積も増加した。この検討により、0.5℃というわずかな環境温度変化とHIEの重症度の間に相関を認め、その背景にはミクログリアの活性化が関与していることが明らかとなった。本知見は重症度にばらつきが大きい本モデルに対して、温度を自動的に一定にすることができる低酸素チャンバーが有効であることを示した。この研究成果には新規性があり、今後の本領域における研究の発展の基礎を築くことができた。研究成果は、「Frontiers in Pediatrics」に掲載予定である。
治療用ペプチドに関しては、in vitroでのWST-8アッセイにて、M1マイクログリア選択的に生細胞数が濃度依存性に減少することを確認でき次年度のin vivoへの研究の足掛かりを得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

低酸素負荷を行うチャンバーに機械トラブルがあった。本機器は国内生産されておらず、海外での点検作業を要したため、その間はin vivoでの実験を行うことができなかった。さらに、COVID-19の影響でチャンバーの輸送に時間を要し、やや進捗に遅れが生じている。

今後の研究の推進方策

今後はHIEモデルマウスへ治療用ペプチドの投与を行い、治療効果の検討を行っていく。まずはペプチドの投与法のin vivoにおける投与法の確立を行う。その後、本年度の研究成果より、運動機能障害を認め、患側へのミクログリアの集積も強い低酸素時のチャンバーの設定温度である36.5℃を条件に固定し、HIEモデルマウスの作成を行う。そして、低酸素負荷から24時間後に治療用ペプチドとして左脳室ペプチドの投与を行う。
HIE後72時間で脳を摘出し、虚血の程度をMAP2染色にて評価する。またM1ミクログリアに特異的に発現するCD86染色を行う。さらにPCRによる炎症性サイトカインの評価も行い、亜急性期における炎症状態を評価する。
さらに、ペプチド投与による治療効果の検討として、HIE後2週間における運動機能評価(ロータロッド試験、オープンフィールド試験)を行った上で、潅流固定後に脳を摘出し、組織学的評価を行う。神経細胞を染色するMAP2染色で患側脳と健側脳の萎縮率を比較し、ミクログリアを染色するIba-1染色でミクログリアの動態観察を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

低酸素チャンバーに不具合が生じ、修理を必要とした。しかし、本研究機器は海外で生産されている研究機器であり、海外輸送を必要とした。さらに、COVID19の影響で海外での点検と修理にかなりの時間を要し、研究の進捗が遅延したため、本年度に使用する予定であった実験が次年度に持ち越しとなったため。

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公開日: 2022-12-28  

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