RNAに着目した先天免疫異常症の診断法の確立を行い,下記の成果を得た。 1)RelA異常症の当たらな病態解明:国際共同研究に参加し,従来ハプロ不全症により発症すると考えられていたRelA異常症が,優性阻害効果によりI型インターフェロン産生亢進などの機序を介して自己免疫現象ならびに自己炎症性疾患を発症することを報告する論文報告に,第二筆頭著者として貢献した。 2)毛髪など非血球系由来のRNAを用いた先天免疫異常症診断法の確立:DNAに基づく従来の遺伝子診断で診断確定が困難な先天免疫異常症症例に関して,RNAに着目した診断法が有用な場合がある。しかし,血球系に発現していない遺伝子に関しては従来の血液検体ベースのアプローチでは対応が困難である。そこで,比較的侵襲の少ない非血球系細胞を用いてRNAに着目した診断法が可能か検討した。その結果,毛髪などの非血球組織を用いて一部の先天免疫異常症関連遺伝子の発現(例:SPINK5)を確認し,実際に同遺伝子の変異により発症した症例の毛髪サンプルを用いて発現解析が可能であることを確認した。 3)NEMO異常症の新規遺伝子診断法の確立:偽遺伝子が存在するため,次世代シークエンサーによる解析が困難なNEMO異常症の遺伝子診断には,従来Long range PCRなどのPCRに基づく遺伝子診断が行われてきた。しかし,既報告のPCR診断法で用いられているPrimerでは設計に問題があり,非特異的な増幅がしばしばみられること,PCR反応に長時間を要すること,複数のPCR法を用いて解析するため,煩雑な手順を踏む必要がある,などの問題点があった。そこで,我々は1つのPCR法で,短時間に包括的な解析が可能な遺伝子診断法を開発し,その有効性を検証した。
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