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2020 年度 実施状況報告書

WT1遺伝子異常症に対する病態解明と新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K16926
研究機関神戸大学

研究代表者

長野 智那  神戸大学, 医学研究科, 助教 (60814316)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードWT1遺伝子 / 転写因子 / Denys-Drash症候群 / Frasier症候群
研究実績の概要

WT1遺伝子はWilms腫瘍の原因遺伝子として単離された遺伝子である。WT1蛋白はC末端に4つのZnフィンガー構造(DNA結合ドメイン)を有し、DNA上の転写調節配列に結合し転写因子として働く。泌尿生殖器系の発生分化および、生後も腎糸球体の構造維持に関与している。WT1遺伝子異常症は常染色体優性遺伝形式を呈し、変異の部位により多彩な症状を来す。乳児期に発症する進行性の腎障害、Wilms腫瘍、性分化異常を呈するDenys-Drash症候群患者は主にエクソン8あるいは9のミスセンス変異を有し、緩徐に進行する腎障害、性分化異常やWilms腫瘍・性腺腫瘍を特徴とするFrasier症候群はイントロン9に変異を有するなど遺伝子型によりその臨床像が大きく異なることを特徴とする。しかし、WT1遺伝子異常症の日本人における正確な発症頻度は知られておらず、遺伝子診断体制も確立していない。また有効な治療法は存在しない。
本研究は日本人における両疾患の発症頻度を明らかにすると共に、Denys-Drash症候群については転写活性を測定する系を確立し、検出された新規変異の病原性の証明系の確立、発症メカニズム、転写活性と重症度との相関関係の解明を行う。またFrasier症候群においてはイントロン9のスプライスサイト変異により、9塩基に由来する3つのアミノ酸(リジン,スレオニン,セリン)が欠失することが特徴である。そのため、核酸医薬を用いたスプライシング制御により、これらの3つのアミノ酸の挿入をもたらす治療薬の開発により、同疾患に対する根本的治療法の確立を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子腎診断体制を確立しているため、全国から検体を集める事が出来ており一定量の検体が得られている事が研究の進展につながっている。
2016年から現在まで、蛋白尿を認める症例に関して400例の解析を終了しており、125例の31%で遺伝子変異を同定している。そのうち、WT1遺伝子に変異を認めた症例が一番多く、30例であった。そのなかの9例はイントロン9の変異を認めておりFrasier症候群と診断された。
エクソン8または9にミスセンス変異を有し臨床像が明記された既報例と我々が遺伝学的検査を行った症例を合わせた合計174例を用いたシステマティックレビューを行った。Exon8-9内のDNA結合(DB)部位の変異(95例)、DB部位ではないがその立体構造を形成するために重要なアミノ酸(C2H2)の変異(38例)とそれ以外(others)の変異(41例)の3群間で比較検討を行った結果、DB変異およびC2H2変異を有する症例はothersに比較し有意に末期腎不全進行年齢が早かった(0.90歳vs 3.92歳, p<0.0001、および2.00歳vs 3.92歳, p=0.0155)。3つの群においてそれぞれ3変異を抽出しLuciferase assayを用いたin vitro転写因子活性を測定した。DB変異とC2H2変異はOthersの変異に比べ有意に転写因子活性の低下を認めた。

今後の研究の推進方策

既に我々は、プロモーターアッセイによる転写因子機能解析系の開発を行った。その結果、DDSにおけるDominant negative効果の証明に成功している。今回はこのLuciferase assayを用いたin vitro転写因子活性測定系を使用しWT1遺伝子変異の3つの群においてそれぞれ3変異の転写因子活性の測定を行った。今後は今回測定した9か所以外の部位においても転写因子活性を測定する予定である。また、WT1遺伝子変異はエクソン8、9だけでなくその他のエクソンのミスセンス変異症例も近年報告されている。そのためバリアントの病原性の判定をin vitro転写因子活性測定系を使用し行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響で、臨床診療を行う事となり実験及び研究を行うことが出来なかったため。
感染症が落ち着いた状況であれば実験を再開し今後の研究を進めていく。今後の方針としては既に我々は、プロモーターアッセイによる転写因子機能解析系の開発を行っているためこの方法を応用していく予定である。9か所の変異については転写因子活性を測定済であるためその他の部位に対しても同様に転写因子活性を測定していく。転写因子活性測定には発光測定が不可欠であり、そのための試薬購入費が必要である。WT1遺伝子変異はエクソン8、9だけでなくその他のエクソンのミスセンス変異症例も近年報告されている。そのためバリアントの病原性の判定をin vitro転写因子活性測定系を使用し順次行う予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] WT1遺伝子exon8-9ミスセンス変異における遺伝型-臨床型の相関に関する研究2020

    • 著者名/発表者名
      長野 智那
    • 学会等名
      第55回 日本小児腎臓病学会学術集会
  • [学会発表] WT1遺伝子exon8-9ミスセンス変異における遺伝子型-臨床型の相関に関する検討2020

    • 著者名/発表者名
      長野 智那
    • 学会等名
      第63回 日本腎臓学会学術総会

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公開日: 2021-12-27  

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