先天性中枢性低換気症候群(CCHS)は、基本病態である低換気に対して根本的な治療法がなく、患児は終日人工呼吸管理を要する。CCHSを引き起こすPHOX2B遺伝子変異の内、90%以上で20ポリアラニン鎖領域における4~13個のアラニン伸長変異(polyalanine repeat expansion mutations:PARM)が検出され、PARMの中では7アラニン伸長変異PHOX2B(+7Ala mutant)が一番多い。 本研究は、CCHSの治療法開発の第一歩として、「CCHSの原因遺伝子であるPHOX2B遺伝子の20ポリアラニン鎖領域における7アラニン伸長変異 (+7Ala mutant)の発現を特異的に抑制するアンチセンス核酸(ASO)医薬の取得」を目的に行った。その成果として、① CCHS患児より血液サンプルを収集、DNA抽出を行い、PHOX2B (+7Ala mutant)のハプロタイプを同定、②患者検体由来ゲノムDNAよりミニ遺伝子を作製、③①で同定したPHOX2B (+7Ala mutant) pre-mRNAに対するASOの設計、②のミニ遺伝子を利用したASOスクリーニング、④患者由来の血液サンプルよりiPS細胞を4株樹立し、PHOX2Bを発現する神経細胞へ分化誘導した。今後は、分化誘導した神経細胞でASOのPHOX2B (+7Ala mutant) mRNA抑制効果の評価を行うことを予定している。
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