1年目は、6か月未満の乳児の胆道閉鎖症(BA群)とBA以外の胆汁うっ滞群(Non-BA群)の血清と尿を用いて、7種類のオキシステロールを分析した。結果、尿中の22(R)-hydroxycholesterol、25-hydroxycholesterol、27-hydroxycholesterol が、Non-BA群よりもBA群で有意に高かった。BA診断におけるROC解析を行ったところ、27-hydroxycholesterolのAUCが0.83と最も高く、BA診断の感度、特異度はそれぞれ、79%、90%だった。 2年目には、尿中27-hydroxycholesterolと最新のBA診断マーカーである血清Matrix Metalloproteinase-7(MMP-7)を比較するために、対象症例を増やし血清MMP-7の測定をおこなった。血清MMP-7のBA診断におけるROC解析のAUCは0.99で、BA診断の感度、特異度はそれぞれ、100%、90%であった。 3年目の本年度は、尿中27-hydroxycholesterolと血清MMP-7のどちらがBA診断により有用か、両方を分析したBA群14例、Non-BA群10例、合計24例のデータを用いて比較検討した。ROC解析で血清MMP-7と尿中27-hydroxycholesterolのAUC、感度、特異度はそれぞれ0.98vs0.83、93%vs79%、90%vs90%で、血清MMP-7の方が優れていた。血清MMP-7と尿中27-hydroxycholesterolの相関分析を行ったところ、Spearman相関係数は0.16、P=0.58で有意な相関は認めなかった。 以上の結果から、BA診断のバイオマーカーとしては、尿中27-hydroxycholesterolより血清MMP-7の方が優れている可能性が高いことが示唆された。しかし、解析した症例数が少ないため、症例数を増やしての再検が必要と考えられる。また、BA群の葛西手術後の予後(肝移植)予測への有用性はどちらが優れているかなどの検討も今後必要と考えた。
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