研究課題/領域番号 |
20K16942
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
關中 悠仁 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 小児科学, 助教 (90837238)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MIRAGE症候群 / SAMD9 / 免疫不全症 / 自己炎症疾患 / 樹状細胞 / サイトカイン異常 |
研究実績の概要 |
MIRAGE症候群の免疫異常に焦点を絞り、免疫不全および自己炎症の発症機序を解明し新規治療法を開発する事、原因遺伝子SAMD9の免疫系における機能を明らかにする事を目的とし、下記の検討を行った。1)MIRAGE症候群患者の免疫異常の実態調査:遺伝子解析にてSAMD9異常と確定診断されているMIRAGE症候群10症例を対象とし、臨床情報を収集した。その結果、細菌感染症だけでなく、ウイルス・真菌感染症の反復罹患や重症化を呈し、幅広い病原微生物に対する易感染性が存在することが示された。さらに、大部分の症例で、繰り返す不明熱や周期性発熱といった自己炎症疾患に類似した病態を呈していることが判明した。予後は非常に不良で、2歳未満で10例中例が死亡した。死因はすべて感染症に起因するものであった。2)MIRAGE症候群患者の樹状細胞の解析:本疾患10症例の末梢血リンパ球FACS解析の結果から、樹状細胞(DC)がpDC, mDCともに減少している事を見出した。pDC欠損症例(10例中2例)は早期死亡していた。一方で、樹状細胞が比較的残存している患者は年長まで生存しており、樹状細胞の減少と生命予後の相関が示唆された。また、Tfh細胞、γδT細胞、NK細胞の減少が共通して認められた。3)MIRAGE症候群患者における炎症性サイトカイン解析:患者(発熱時、非発熱時)血清及び健常コントロール血清を用いて、血清サイトカイン解析を実施した。MIRAGE症候群患者の発熱時検体では血清炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α、GM-CSF、MIP3αなど)が異常高値を示した。一方で、自己炎症疾患患者で持続的に高値を示すIL17-AはMIRAGE症候群患者でも発熱の有無によらず高値であり、自己炎症疾患様の病態を呈していることを示した。 上記の解析結果をまとめ、Journal of Clinical Immunology誌に投稿し、掲載済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者検体を用いた分子生物学的な解析についてはおおむね予定通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
・SAMD9の樹状細胞の分化および機能的成熟における役割の検討:SAMD9は細胞増殖に関わり、変異により樹状細胞細胞分化障害を来すと考えた。これまでに、患者末梢血からiPS細胞を樹立した。この患者iPS細胞から樹状細胞への分化障害および形態異常、抗原提示能やサイトカイン産生能障害などの機能障害について検討する。 ・SAMD9の炎症性サイトカイン産生への関与:患者由来iPS細胞を単球に分化させ、、炎症性サイトカイン過剰産生の有無を検討する。 ・治療法への応用:MIRAGE症候群の自己炎症症状に対しては有効な治療法がなく、慢性消化管障害、血球貪食症候群、多臓器不全を発症し、特に感染症罹患を契機に急性増悪をきたし、主な死亡原因となっている。炎症性サイトカインTNF-α、IL-6、IL-1β、IL17Aの過剰産生に対し、各サイトカイン中和抗体による新規治療法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
培地、試薬等が当初想定より安価に購入できたため、差額を次年度に繰り越した。
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