研究実績の概要 |
MIRAGE症候群の免疫異常に焦点を絞り、免疫不全および自己炎症の発症機序を解明し新規治療法を開発する事、原因遺伝子SAMD9の免疫系における機能を明らかにする事を目的とし、下記の検討を行った。1)MIRAGE症候群患者の免疫異常の実態調査:遺伝子解析にてSAMD9異常と確定診断されているMIRAGE症候群10症例を対象とし、臨床情報を収集した。その結果、細菌感染症だけでなく、ウイルス・真菌感染症の反復罹患や重症化を呈し、幅広い病原微生物に対する易感染性が存在することが示された。さらに、大部分の症例で、繰り返す不明熱や周期性発熱といった自己炎症疾患に類似した病態を呈していることが判明した。予後は非常に不良で、2歳未満で10例中例が死亡した。死因はすべて感染症に起因するものであった。2)MIRAGE症候群患者の樹状細胞の解析:本疾患10症例の末梢血リンパ球FACS解析の結果から、樹状細胞(DC)がpDC, mDCともに減少している事を見出した。pDC欠損症例(10例中2例)は早期死亡していた。一方で、樹状細胞が比較的残存している患者は年長まで生存しており、樹状細胞の減少と生命予後の相関が示唆された。また、Tfh細胞、γδT細胞、NK細胞の減少が共通して認められ た。3)MIRAGE症候群患者における炎症性サイトカイン解析:患者血清及び健常コントロール血清を用いて、血清サイトカイン解析を実施した。MIRAGE症候群患者の発熱時検体では血清炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α、GM-CSF、MIP3αなど)が異常高値を示した。一方で、自己炎症疾患患者で持続的に高値を示すIL17-AはMIRAGE症候群患者でも発熱の有無によらず高値であり、自己炎症疾患様の病態を呈していることを示した。 解析結果をJournal of Clinical Immunology誌に掲載済み。
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