シスチノーシスは、CTNS遺伝子変異によりライソゾームにシスチンが蓄積することで、未治療だと10歳前後で腎不全に至る難治性の常染色体劣性遺伝疾患である。早期診断早期治療により劇的に予後が改善するが、現在の確定診断法では早期診断は困難である。本研究は、シスチノーシスモデルラットから樹立した初期胚線維芽細胞(REF)およびシスチノーシスモデルラットを用いて、プロテオーム解析およびメタボローム解析を行うことにより、早期診断に有用なバイオマーカーを同定すると共に、疾患発症の分子メカニズム解明の糸口となる分子の同定を目的とした。 シスチノーシスモデルラット由来のREFを用いたプロテオーム解析において、コントロール系統由来REFと比較して有意に増加したタンパク質は12個あり、逆に減少したタンパク質は46個であった。最も顕著に発現増加していたタンパク質は、金属と結合することが報告されていたため、8週齢のシスチノーシスモデルラットより採取した血清中の微量金属を測定した。コントロール系統と比較し、19種類の血清中微量金属は8種類が有意に増加、1種類は有意に減少していた。病態の進行と微量金属濃度変動に相関があるかを確認するため、56週齢のシスチノーシスモデルラット血清を用いて検証した結果、さらに濃度が増加あるいは減少した金属はそれぞれ2および6種類であった。また、シスチノーシスモデルラット由来REFを用いて行ったメタボローム解析では代謝化合物175個が検出され、そのうち有意水準 P < 0.001を示した代謝化合物は4個であった。そのうち2つはTCA回路の中間生成物であった。 本研究により、シスチンが蓄積することにより、微量金属の代謝異常が引き起こされている可能性が示されたため、引き続きそのメカニズムを明らかにしていく予定である。
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