研究実績の概要 |
先天性十二指腸閉鎖・空腸閉鎖症は胎児期に臍帯潰瘍が発生することがあり、臍帯血管から出血すると半数以上が胎児死亡、もしくは新生児死亡となる。しかし、これまで臍帯潰瘍の発生頻度や予後について調べた前方視的な研究はない。また、臍帯潰瘍のリスク因子も分かっていない。本研究では先天性十二指腸閉鎖・空腸閉鎖症と胎児診断された症例を登録する前方視的レジストリ研究である。臍帯潰瘍は診断の経験がある病理診断医2名によって診断された。臍帯潰瘍は顕微鏡所見によってその重症度をgrade0~4に分類した。そして羊水中胆汁酸濃度やトリプシン濃度などを測定し、妊娠背景や胎児の特徴と共に臍帯潰瘍との関連を調査した。全国23施設が研究に参加し、2020年11月から登録を開始した。COVID-19感染症の流行もあり登録数の増加が予定よりも少なくなったため、登録期間を1年間延長し、2024年3月末までとした。現在登録が完了し、計121例の登録となり、目標のサンプルサイズを達成した。病理診断は89例で完了し、grade0(臍帯潰瘍なし)が3例、grade1(上皮の剥離)が37例、grade2(基底膜の消失)が26例、grade3(ワルトン膠質の菲薄化)が9例、grade4(血管の露出)が13例であった。周産期死亡は9例あり、胎児死亡が4例、新生児死亡が5例であった。21トリソミーは28例に認められた。羊水採取した症例のうち、初回採取時の羊水中総胆汁酸濃度の中央値は9.88(Q1 2.19, Q3 19.53)μmol/Lであり、羊水中トリプシン濃度の中央値は1429(Q1 980, Q3 9955)ng/mLであった。現在、登録された症例の残りのデータ収集を実施しており、すべてデータの収集が完了してから解析に移る予定である。本研究の結果は論文として発表し、臍帯潰瘍に伴った児の予後の悪化を防ぐために、我々が次に実施するべきことを明らかにする。
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