研究課題/領域番号 |
20K16954
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
松田 秀岳 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (20464084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | circulating tumor cell |
研究実績の概要 |
2020年9月から2021年5月までの肝細胞癌21例(早期 cStage I/II:1/8、進行期 cStage III/IVA/IVB:3/7/2例、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法(Atezo+Bev)/肝動脈化学塞栓療法(TACE):8/13例)を対象とした。治療前、治療開始1週後、4週後に末梢血5mLを採取しRosetteSepTM Human CD45 Depletion Cocktail(STEMCELL Technologies)でcirculating tumor cell (CTC)を濃縮後、BD FACS Aria II (BD Biosciences)を用いて細胞表面ーカー発現(CD45、CD90、CD133、PanCK、EpCAM、Vimentin)を解析し、CTCはCD45陰性かつPanCK陽性細胞と定義した。CTCを回収後にRNAを抽出しNested-PCR法を用いて遺伝子発現を解析した。その結果、肝細胞癌進行度別の治療前CTC数は、早期と比較し進行期において有意に多いことが判明した。治療1週後のCTC数はTACE群で減少した一方、Atezo+Bev群では増加した。また、CTCのサブタイプ解析ではCD90陽性CTC数がTACE群で減少していた。CTCの遺伝子発現解析ではCD90および幹細胞マーカー(OCT3/4・NANOG)の発現がTACE群で治療後に低下したが、Atezo+Bev群では上昇を認めた。両治療群で計6例が治療後に病勢の進行を認め、進行群と非進行群における治療前後のCTCを比較するとc-Mycの遺伝子発現が進行群で有意に上昇していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療戦略の決定など、臨床への応用も期待されているcirculating tumor cell (CTC)を肝細胞癌症例で解析した。肝細胞癌のアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法(Atezo+Bev)および肝動脈化学塞栓療法(TACE)の治療経過において、CTCの発現する癌幹細胞マーカーの変化を分子細胞学的に解析し、臨床的意義について検討したことで、本研究の主要な目的のである進行肝細胞癌の治療効果を予測しうるバイオマーカーの同定につながる成果が得られたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
臨床症例より採取した、肝細胞癌組織中の微小環境解析を継続する。また,肝癌及び対照症例の血液検体を用いた経時的な免疫担当細胞とサイトカイン動態の解析と,血液中のHLA class Ⅰ, class Ⅱ,PD-1発現解析に着手する.加えて,肝癌の治療経過と関連し得るHLA class II領域の一塩基多型探索を開始する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に予定していた、肝癌の治療経過と関連し得るHLA class II領域の一塩基多型探索を開始しなかったため、結果的に当該解析の予算が次年度使用額となった。令和4年度に、同解析に使用する計画である。
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