研究実績の概要 |
2020年9月から2022年4月にかけて、Atezolizumab-Bevacizumab併用療法(Atezo-Bev)で治療した切除不能肝細胞癌13例を対象とし、治療前、3週後、効果判定時(mRECISTで評価)に末梢血を採取した.末梢血循環腫瘍細胞(CTC)を分離し、濃縮した細胞をCD45、CD90、CD133、Pan-CK,EpCAM、Vimentinなどの細胞表面抗原を標的としたモノクローナル抗体で染色した。フローサイトメトリーにより細胞を計数した。濃縮細胞からRNAを抽出し、幹細胞マーカーなどのmRNAの発現量解析した。また、次世代シーケンサーと遺伝子セット濃縮解析(GSEA)により、幹細胞機能とがん進行に関連する373個の遺伝子を調査した。血清サイトカイン値を、マルチプレックス法で測定した。 PR/SD群のCTC数の中央値は、治療前と比較して減少した(141±43 vs. 58±6、p < 0.05)一方、PD群では有意な変化は見られなかった。CTC数のサブタイプ解析では、PR/SD群でVimentin陽性CTCが減少していた。CTCのRNA発現解析では、CD90、CD133、幹細胞マーカー(SOX2、c-Myc、NANOG)がPR/SD群で減少し、PD群で増加した。CTCのターゲットRNA-Seq解析では、PD群のCTCではTGF-βとMAPKのシグナル伝達経路が有意に濃縮されていることが示された。48種類のサイトカインでは、Atezo-Bev中のすべての時点で、PD群の血清HGFおよびM-CSF濃度が高値だった。 また、肝細胞癌との比較検討のため、他の肝機能異常を示した症例における血清サイトカイン動態も測定したところ、COVID-19に伴う肝機能異常を示した症例において、肝酵素の経時的変化と一致した血清IL-6、IL-10、TNF-αの推移が確認された。
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