研究課題/領域番号 |
20K16955
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
山中 勝正 浜松医科大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (80838061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロサテライト不安定性 / 大腸がん / 遺伝子検査 / 精度保証 |
研究実績の概要 |
近年、DNAミスマッチ修復機構の欠損(deficient-MMR: dMMR)を認めるがんに免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体が有効であると報告された。この有効性は、dMMRが高頻度変異(Tumor Mutation Burden-High: TMB-H)を引き起こし、多種多様のがん抗原を産生するため、免疫チェックポイント機構の阻害によりT細胞ががん細胞を攻撃することが本態である。dMMRがんか否かを判定する方法として、MMR機能の低下によりマイクロサテライト反復配列ががん部において正常組織と異なる反復回数であることを検出するマイクロサテライト不安定性(MSI)検査、MMR蛋白の発現欠損を同定することでdMMRか否かを判定するMMR蛋白の免疫組織化学(IHC)、さらにはNGSで多数のマイクロサテライト領域の反復配列の違いを判定する方法がある。このように、dMMRがんや高頻度がん同定のための検査手技や判定方法はさまざまであるうえに、NGSを用いたがん遺伝子関連検査は病理標本の準備、採血、核酸抽出、ライブラリ調製、シークエンス、配列アラインメント、変異検出、変異の意義づけという複数のプロセスからなり、それぞれが簡単ではなく複雑な検査である。そこで我々はマイクロサテライトマーカーセットの違いによるMSI検査の相違点は何かに焦点を当てて調査を実施した。浜松医科大学医学部附属病院検査部に提出されたMSI検査のうち、解析に使用する解析波形において、わずかに乱れがあるものが数件認められた。これらの検体を使用し、別のマーカーセットでの解析およびIHC検査を新たに実施して、検査方法による結果の相違について今後検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
測定機器の更新によりMSI検査の別のマーカーセットによる解析がやや遅れており、現在調整中である。これについては解決の見込みがついている。
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今後の研究の推進方策 |
現在研究を行っている大腸がん以外のがん種についても抗PD-1抗体は治療に使用されている。抗PD-1抗体の使用にはMSI検査の検査結果が重要であるが、血液疾患についてはMSI検査は実施されておらず、一部のリンパ腫を除き抗PD-1抗体の使用は認められていない。また、急性白血病などの血液腫瘍におけるMSI検査、抗PD-1抗体の有用性の報告もほとんど存在しない。今後は血液腫瘍におけるMSI検査の有用性についても並行して調査していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定機器の機器更新により、研究計画に遅れを生じた。次年度に使用する金額は残っているものの、当初の計画に従って検討するため、全て使用する見込みとなっている。
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