研究実績の概要 |
臨床情報を用いた研究に関しては、大阪大学と関連病院で構成される多施設共同研究Osaka Liver Forum(OLF)のコホートを用いて、約300例のウイルス排除(sustained virologic response, SVR)が得られた肝癌治療後C型慢性肝疾患症例において、抗ウイルス治療開始後の肝癌再発率及び全生存率は、従来のインターフェロン治療と直接作用型抗ウイルス薬(direct-acting antiviral, DAA)治療とで差を認めないことを明らかにし報告した(Tahata Y et al. Hepatol Res 2020.)。また、OLFのコホートを用いて、約2,000例の肝癌治療歴の無いC型慢性肝疾患症例における、SVR後の肝発癌リスク因子の同定及びそれらの因子を用いたSVR後肝発癌予測モデルの有用性について、現在論文投稿中である。これら肝発癌リスク因子の同定及び肝発癌予測モデルの作成により、より効果的なSVR後肝癌サーベイランスが可能になると考えられる。血清エクソソームを用いた研究に関しては、ショットガンプロテオミクスを行い、新規肝線維化マーカーとして数種類の候補タンパクを抽出しており、現在これらの候補タンパクについて、validationコホートを設定しターゲットプロテオミクスを行い、有用性について検証中である。また、SVR後肝発癌予測マーカーについては、ショットガンプロテオミクスを行い、数種類の候補タンパクを抽出している。今後これらの候補タンパクについて、validationコホートにて検証を行う予定である。既存の肝線維化マーカー及び肝発癌マーカーだけでは、肝癌高危険群である肝線維化進展例の囲い込み及びSVR後肝発癌症例の囲い込みは不十分であり、新規マーカーの同定により、これらの症例のより効果的な囲い込みが可能になると考えられる。
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