研究実績の概要 |
臨床情報を用いた研究に関しては、大阪大学と関連病院で構成される多施設共同研究Osaka Liver Forum(OLF)のコホートを用いて、約2,000例の直接作用型抗ウイルス薬(direct-acting antiviral, DAA)治療によりウイルス排除(sustained virologic response, SVR)が得られた肝癌既往歴の無いC型慢性肝疾患症例において、SVR後の肝発癌リスク因子を同定した。また、それらの因子を用いたSVR後肝発癌予測モデルを作成し、肝発癌リスクの層別化に有用であったことを明らかにし、報告した(Tahata Y et al. Aliment Pharmacol Ther 2021.)。また、OLFのコホートを用いて、約1,600例の肝線維化非進展症例における、SVR後の肝発癌リスク因子の同定及びそれらの因子を用いたSVR後肝発癌予測モデルの有用性について、現在論文投稿中である。これにより、肝発癌リスクの比較的低い肝線維化非進展例において、安全に肝癌サーベイランスを中止できる症例が明らかになると考えられる。血清エクソソームを用いた研究に関しては、エクソソーム中および血清中の候補タンパクの検証を行い、新規肝線維化マーカーとしての有用性について、現在論文投稿中である。また、SVR後肝発癌予測マーカーについては、ショットガンプロテオミクスを行い、数種類の候補タンパクを抽出している。既存の肝線維化マーカー及び肝発癌マーカーだけでは、肝癌高危険群である肝線維化進展例の囲い込み及びSVR後肝発癌症例の囲い込みは不十分であり、新規マーカーの同定により、これらの症例のより効果的な囲い込みが可能になると考えられる。
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