研究実績の概要 |
本研究では老化に関与する分子であるSIRT7が、腸管においてどのような機能を有しているかを解析している。これまでの予備実験ではデキストラン硫酸(DSS)誘導性腸炎においてSirt7KOマウスはWTと比較し、惹起される腸炎の程度が異なることが見出された。同分子がユビキタスに発現する一方で、細胞により機能が異なることがある。 初年度は上皮機能に着目して解析を行なっており、本年度はさらに腸管線維細胞における影響に関して検討をおこなった。 まず、腸管線維芽細胞においてSIrt7の発現が炎症下に変化するのかを検証した。ヒト大腸線維芽細胞株であるCCD-18Coを用いて様々な炎症性サイトカイン(TGF-β, TNF-α, IL-17)の存在下に培養したところ、Sirt7はTGF-βの存在下においてその発現量が増加しており、何らかの機能を有していることが示唆された。 続いて、Sirt7が腸管線維芽細胞においてcollagenの産生に影響しているかを検討した。WTマウスとSirt7 KOマウスより大腸の線維芽細胞を抽出、培養し、それにTGF-β刺激により線維化へ関与する分子(collagen 1A1, MMR2, TINP-1, collagen3)の発現をqPCR法にて検証した。結果、TGF-β 刺激によりcollagen1A1の発現はSirt7KOにおいて有意に増加していた。 これらのことからSIrt7は、腸管線維芽細胞において、炎症状態においてはその発現を負に制御していることが示唆され、炎症状態における過剰な繊維化を制御する機能を有している可能性が考えられた。
|