本研究の目的は、ラット近位結腸の運動制御における内在性ドパミン神経の役割を解明することであった。本最終年度は、前年度投稿中であった論文のコメントに対する追加実験を行い、論文受理に至った。 本研究はビデオイメージング法および免疫組織化学的手法を駆使して消化管ドパミン神経の役割を明らかにした。内在性ドパミン神経は平滑筋細胞に直接投射せず、一酸化窒素作動性神経の活性化を介して腸管を弛緩させていることが明らかとなった。D1様受容体拮抗薬SCH23390やドパミン神経毒6-hydroxydopamine(6-OHDA)によりドパミンの機能を阻害すると蠕動運動の発生が減少し非同期的な収縮が発生することから、ドパミンによる腸管の弛緩(収縮抑制)は規律的な蠕動運動の維持に必要であることが明らかとなった。また、D1様受容体が構成的活性化受容体である可能性を検討するために、6-OHDAを用いて消化管のドパミン枯渇後にドパミン関連試薬を適用した。6-OHDA処置標本では、ドパミン再取込阻害薬GBR12909は無効であったが、SCH23390の作用は認められたことから、近位結腸のD1様受容体は構成的活性化受容体である可能性が示唆された。慢性的に6-OHDAを処置したラットを用いた標本では、ドパミン神経を破壊してもなおコントロール群と同様な蠕動運動が認められたため、代償性機構が備わっていると考えられる。 本研究結果は、パーキンソン病における便秘発生機序解明の一助になると考えられる。
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