腹膜播種は、胃癌の転移再発様式のなかでも頻度が高く、現時点で有効な治療法がないことから、新規治療法の開発が望まれる。申請者は、胃癌腹膜播種における上皮間葉転換の重要性を報告し、消化器癌におけるmiRNAの発現異常についても研究し成果をあげてきた。本研究では、現在までに確立したmiRNA解析技術を用いて、胃癌腹膜播種の診断バイオマーカーおよび治療標的分子となるmiRNAを同定し、さらにはmiRNAを介した胃癌腹膜播種形成における分子機構解明を目的とした。 進行胃癌症例の中で、腹膜播種をきたした6症例において、上部消化管内視鏡検査を用いた生検サンプリングにより、癌部と非癌部のペアサンプルを作成した。その臨床検体6ペアに対して、miRNAアレイによる網羅的プロファイリングを行い、癌部で有意に発現亢進している7種類のmiRNAならびに、非癌部で有意には発現亢進している16種類のmiRNAを同定した。癌部で有意に発現亢進しているmiRNAは、胃癌腹膜播種の原発巣に特異的に発現していることから、胃癌腹膜播種形成に関わっている可能性がある。今後、公共データベースを使用してmiRNAの標的遺伝子探索を行い、RNAレベル、蛋白レベルでの解析を行う予定である。さらに、胃癌細胞株に対してmiRNAの強制発現を行い、胃癌腹膜播種形成に関わると考えられる上皮間葉転換への影響、ならびに浸潤能・足場非依存性増殖への関わりを評価する。
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