研究実績の概要 |
実験動物に雄性野生型マウス(WT)C57BL/6マウスとVEGFR1TKノックアウトマウス(TKKO)を用いた。潰瘍性大腸炎モデルはマウスに2%DSSを7日間投与し、その後の7日間は自由飲水することで作成した。WTに比較してTKKKOでは、DSS誘導腸炎のDisease activity、体重変化、結腸長、HE染色切片評価による組織学的スコア―などが悪化し、VEGFR1シグナルの防御的作用が示された。粘膜修復におけるVEGFF1の関与を調べると、VEGFR1の発現はDSS投与終了直後からみられ、粘膜組織に集積するVEGFR1陽性細胞数はWTで増加した。血管新生の観点から検討すると血管内皮マーカーCD31の発現や血管密度は修復期においてWTで増加した。さらにVEGFR1陽性細胞は血管新生促進因子であるTGF-βやEGFを発現した。またVEGFR1陽性細胞は骨髄からVEGFR1シグナルに依存して由来することが分かり、この集積にはSDF-1/CXCR4経路が関与した。次にTregの関与を解析した。Tregは修復期にVEGFR1シグナル依存的に粘膜組織に集積しTGF-βを産生した。Treg集積にはSDF-1/CXCR4経路が寄与した。Tregの関与を抗CD25または抗FR4中和抗体投与でTregを除去して調べると、DSS腸炎は増悪し血管新生も減少した。Treg,VEGFR1細胞ともにCXCR4を発現しただけでなく、TregはVEGFR1を発現した。以上の結果からVEGFR1陽性のTregは炎症粘膜部にSDF-/CXCR4経路を介して集積し、血管新生促進因子TGF-βを産生することで血管新生を増強し粘膜修復がおこなわれていることが示唆された。潰瘍性大腸炎の改善にはVEGFR1シグナルを標的にした治療法の開発につながるものと考える。
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