研究課題
昨年度時点で、46例(CD17例、UC29例)の炎症性腸疾患患者より、血液・便の提供を受け、解析結果を得ていた。本年はさらに患者集積を行い、92例(CD30例、UC62例)より追加解析を行っている。(1)患者腸内細菌叢でのIgA結合細菌の割合をフローサイトメトリー解析で調べた結果は、昨年度と同様に、CDは先行研究に一致して(JCI Insight 6:e148543, 2021)、高い結合率を示した。UCでは、低値から高値を示す症例に大きく分かれた。(2)患者末梢血より得たDNAを用い、HLAクラスI(A/B/C)およびクラスII(DRB1 /DQB1/DPB1)の遺伝子多型より、HLA型を決定した。CDにおいて、DRB1*0405および同*0802の頻度が、日本人全体と比較し有意に高かった。前者は既報にて示された結果と一致しており、精度の高い解析結果が得られていると考えられる。UCについては、Th細胞バランス解析との関連から、classⅡに絞れば、DRB1*1502、DQB1*06:01:01、DPB1*09:01:01が有意に高頻度であった。また、DRB1*09:01:02、DQB1*03:03:02、は逆に有意に低頻度であることが分かった。(3)末梢血CD4+ T細胞の機能性分化について、フローサイトメトリー解析を行った。その結果、UCの症例は、健常人集団やCDに比較して、Th2高値、Treg低値であることが示された。(4)上記データおよび臨床データを用いた相関解析から難治性(PSL依存・抵抗性)UC症例において、有意にIgA結合細菌の陽性率が高いこと、さらにはTh2/Treg比が高値であることが判明した。
3: やや遅れている
現在、患者糞便サンプルの16sメタゲノム解析をナノポアシークエンスにて行う実験のみ、患者エントリーの遅れから残っている。2024年度中には解析し終了予定である。
2024年度中に糞便細菌のメタゲノム解析の終了を目指す。その後、現在までの研究新着で得られた免疫の特徴(Th2/Treg比高値)を規定する具体的な腸内細菌の同定を目指す。
糞便腸内細菌のメタゲノム解析がまだ完了しておらず、同研究解析費に使用予定。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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