研究課題/領域番号 |
20K16973
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
カン シン 東京慈恵会医科大学, 医学部, 研究補助員 (90706186)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PD-L1 / 腫瘍抗原 / 免疫逃避機構 / 膵臓がん |
研究実績の概要 |
Programmed cell death Ligand 1 (PD-L1)を発現するがん細胞はProgrammed cell death 1 (PD-1)を介し細胞傷害性T細胞(CTL)の抗腫瘍応答を抑制することが知られている。しかしながら、これらの分子を標的とした免疫チェックポイント阻害薬の効果は、難治性でがんの代表である膵臓がんに対しては、無効であるため、新規治療戦略が求められている。 我々は、多くのヒト膵臓がん細胞株とヒト膵臓がん腹水由来のがん細胞株に、PD-L1発現と腫瘍抗原Xの発現に逆相関がみられることを見いだした。そこで、我々はPD-L1発現膵臓がん細胞がPD-L1の下流で腫瘍抗原Xの発現を抑制し、最終的に腫瘍抗原X特異的CTLから逃避する新しいメカニズムを着想した。本研究では、PD-L1の下流で腫瘍抗原の発現を制御するメカニズムの解明を目的としている。この結果、PD-L1を発現する膵臓がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の治療抵抗性に対するメカニズムも解明できる可能性がある。 2020年度の計画は、PD-L1と腫瘍抗原Xの関連性を解析するため、CRISPR/Cas9システムを用いてPD-L1欠損膵臓がん細胞株を樹立することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに、PD-L1を標的としたguide RNA/Cas9発現ベクターと、標的領域に相同な配列とGFPや薬剤耐性遺伝子を含むドナーベクターを同時にPD-L1発現膵臓がん細胞に導入した。その後、薬剤によるセレクションと限界希釈法により、クローンを単離し培養した。しかし、得られたクローンは非常に少なく、PD-L1標的領域にGFPや薬剤耐性遺伝子が挿入(ノックイン)されたものを得ることができなかった。そのため、PD-L1欠損膵臓がん細胞株の樹立に時間を要し、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、PD-L1欠損膵臓がん細胞株を樹立するに至っていない。対策として、導入するベクターの比率・回数を検討し細胞への導入効率を上げること、単離するクローンの量を増やすこと、相同組換えやノックイン効率を上げる化合物を添加するなどの条件検討を行う。ノックインに成功したクローンは、immunoblotによりPD-L1の発現欠損を確認する。
樹立したPD-L1欠損膵臓がん細胞株は腫瘍抗原Xの発現が誘導されると考えられるため、腫瘍抗原Xの発現量を定量的PCRやimmunoblotで評価する。また腫瘍抗原X特異的CTLと共培養することで、細胞傷害活性の変化をflow cytometryで解析する。さらに腫瘍抗原Xを過剰発現させたPD-L1発現細胞株において、PD-L1の発現が抑制されると考えられるため、PD-L1の発現量を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により試薬や消耗品の納品に時間を要したため、購入できなかった分子生物学用試薬、抗体や消耗品を購入するために用いる。
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