研究課題/領域番号 |
20K16973
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
カン シン 東京慈恵会医科大学, 医学部, 研究補助員 (90706186)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PD-L1 / 腫瘍抗原 / 免疫逃避機構 / 膵臓がん |
研究実績の概要 |
膵臓がんはProgrammed cell death Ligand 1(PD-L1)を発現しているのにも関わらず(Cancer Invest 2019)、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果は乏しく(N Engl J Med 2012, Ann Oncol 2014)、その原因を解明することが急務である。 我々は、多くのヒト膵臓がん細胞株とヒト膵臓がん腹水由来のがん細胞株に、Programmed cell death Ligand 1(PD-L1)の発現と腫瘍抗原Xの発現に逆相関がみられることを見いだした。我々はPD-L1が腫瘍抗原の発現を制御するメカニズムを解明するため、以下の仮説を立てた。PD-L1発現膵臓がん細胞が腫瘍抗原Xの発現誘導因子を抑制し、腫瘍抗原Xの発現が低下する。その結果、抗腫瘍免疫細胞は腫瘍抗原を認識できず、免疫逃避状態に陥る。本研究はこの仮説を立証することを目的としている。 2022年度は、以下の二点を明らかにした。 (1)膵臓がん細胞株(腫瘍抗原高発現、PD-L1低発現)にPD-L1を過剰発現させた安定株において、腫瘍抗原Xの遺伝子およびタンパク質の発現が親株と比べ低下することを確認した。 (2) PD-L1野生型株、IFN-g処理によってPD-L1を高発現させた株とPD-L1欠損株から精製したmRNAを用い、RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現比較解析を行った。その結果、3種類の細胞の中でPD-L1欠損株で発現が高く認められる遺伝子を24個、発現が低く認められる遺伝子を399個得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年の目標はPD-L1の下流で腫瘍抗原の発現を制御する機序の解析であった。しかし、RNA-seqやデータベースによる解析に必要以上に時間を要したため、研究がやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
得られた発現変動遺伝子をノックダウンあるいは過剰発現させ、腫瘍抗原の発現誘導をqPCRやimmunoblotで解析する。 またこれに関与する経路や転写因子をパスウェイ解析やデータベースなどで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に時間を要し、その後の機能解析で用いる研究費が残った。2023年度は得られた遺伝子の機能解析のため、ノックダウンや過剰発現のベクター構築に必要なプライマー合成費用と分子生物学試薬、そしてqPCRやimmunoblotで必要な試薬、抗体や消耗品などの購入に用いる予定である。
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