研究実績の概要 |
自己免疫性膵炎が全身性のIgG4関連疾患の膵臓特異的表現型であることが明らかになり、本疾患の患者数は増加している。自己免疫性膵炎の発症メカニズムは解明されていないが、申請者らは自己免疫性膵炎の発症に腸内細菌叢の変化が関与することを明らかにした。Aryl hydrocarbon receptor (AhR)は腸内細菌由来代謝産物により活性化される転写因子であり、免疫システムの恒常性の維持に重要な役割を果たしている。自己免疫性膵炎を誘導する腸内細菌叢の変化に伴いその代謝産物のProfileも変動することが予測される。そこで、本研究では「腸内細菌叢の変化に伴う細菌由来代謝産物のProfile変化」が自己免疫性膵炎の発症に及ぼす効果をAhRの活性化という視点から明らかにすることを目的とし、以下の事実を見出した。 1)AhRリガンドであるる2, 3, 7, 8-Tetrachlorodibenzodioxin (TCDD)、Indole-3-pyruvic acid (IPA)あるいは青黛の給餌により、自己免疫性膵炎の発症は抑制された。2)AhRリガンドの投与により、IL-22の発現が膵臓内で著明に増加した。3)免疫染色により、膵ラ氏島α細胞がIL-22の産生細胞であることが示唆された。4)Bromodeoxyuridineの取り込みを指標とした検討により、IL-22が膵腺房細胞の増殖・修復に関係していることが示唆された。5)IL-22中和抗体の投与がAhRの活性化による自己免疫性膵炎の抑制を阻害した。6)自己免疫性膵炎患者における血清IL-22は、慢性膵炎患者とのそれと比較し有意に低値であること、ステロイド治療後に著明な上昇がみられた。 以上の結果から、AhRの活性化によるIL-22産生が自己免疫性膵炎における膵腺房細胞の増殖・修復に関与していることが示唆された。
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