胆管癌は予後不良な難治性癌であるが、病理学的診断困難例が多く存在しており、新たな診断法の確立が求められている。細胞外小胞(EV)は様々な細胞から分泌されており、癌の新規バイオマーカーとして注目されている。しかし血液などの循環体液中のEVは、体内で起こる全ての病態生理学的変化を反映し、同時に存在している他疾患の影響を受ける可能性がある。一方、胆汁などの非循環体液中のEVは、遠隔臓器で発生した事象の影響を受けにくい。さらに胆管癌と直に接触する胆汁は、他臓器由来の修飾が少ないと考えられることから、胆汁中EVには胆道疾患に特異性が高いバイオマーカーが存在し、癌の早期発見に寄与するではないかと考えた。そこで胆管癌における胆汁中EVを用いた新規バイオマーカーの探索を行った。これまでヒト体液におけるEV分離は、サンプルの粘稠度や夾雑物の多さにより、高純度という点で課題が残されていた。そこで希釈法、試薬の使用法、超遠心分離法を組み合わせて用いることで高純度EV分離を可能にする方法を確立した。次にこれらの高純度EVを用いて、胆管癌と胆管結石症の2群間におけるプロテオーム解析により、胆管癌診断に有用な候補蛋白質を検出した。またこれらの候補とされたEV内蛋白質濃度をELISA kitを用いて、胆管癌と胆管結石症の2群間で比較し胆管癌の診断マーカーとしてCLDN3が有用である可能性を示した。最後に胆管癌組織における免疫染色にてCLDN3の有意な発現を確認した。
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