潰瘍性大腸炎(UC)は腸管の炎症を主体とする原因不明の疾患で、近年は本邦を含むアジア諸国でも急速に増加している。UCは主に大腸を中心に粘膜障害を生じる疾患であるが、多彩な腸管外合併症をきたすことがあり、それにより日常生活や予後の悪化を認めることがある。UCの腸管外合併症の一つであるPSCは慢性進行性に胆管を破壊する原因不明の難病である。PSC合併UCはUCの約0.8%から8%に合併し、PSCの約40%(欧米では60から80%)に合併する。合併例はUCとPSCの単独症例よりも生命予後が悪いことが報告されている。本研究の目的はUC、PSCの単独例だけでなく両者を合併しているPSC合併UCに共通して免疫動態に関わるCD4+T細胞を用いて、包括的にその病態を明らかにすることである。 UC、PSC、PSC合併UCおよび健常人の各3例ずつの末梢血CD4+T細胞の遺伝子発現プロファイリングを行った。4群間比較において282の遺伝子が発現変動を示していた(Wald検定、p < 0.01)。健常人と比してPSC合併UC群では229の遺伝子が発現亢進し、53の遺伝子が低下していた。階層的クラスタリングによりPSC群、UC群、健常群は明確に群別化された。PSC合併UC群では3例中2例がUC群とPSC群の中間的位置にクラスターを形成し、遺伝子発現パターンではUC群とPSC群の両群の特徴が併存していた。発現変動を示した282の遺伝子のGene Ontology解析による機能解析では、免疫関連分子が豊富に含まれていることが示された。つまり、UCとPSCのCD4+T細胞では疾患特異的な免疫関連分子の発現変動が見られ、PSC合併UCではその両者の特徴が認められた。
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