研究課題/領域番号 |
20K16985
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
和田 康宏 滋賀医科大学, 医学部, 客員助手 (10812125)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵上皮化生 / ラット十二指腸液逆流モデル |
研究実績の概要 |
申請者らは本研究で以下の3項目について検討する計画とした。①ラット十二指腸液逆流モデルの作成と膵上皮化生の組織発生の解明、②膵上皮化生を誘導する胆汁酸の同定、③ラット胃組織を3D培養システムを用いて初代培養し、胆汁酸刺激を加えて、膵上皮化生を誘導する遺伝子を同定。本年度では①を行った。コントロールとラット逆流モデル群を作製する。術後30週までに安楽死させ、胃を摘出し、組織学的に評価した。膵腺房細胞になる抗αアミラーゼ抗体や、膵分化にかかわるとされる抗PDX1抗体や抗PTF1A抗体を用いた免疫染色とともに、SPEMに陽性となるTFF2や幽門腺型の細胞に陽性となるHIK1083と合わせた蛍光二重染色を行い、膵上皮化生の組織発生や起源について検討した。ラット逆流モデルは過去の論文(Mukaisho K, et al. Dig Dis Sci. 48:2153-2158, 2003)に従って作製した。手術後30週まで生存した、12匹の逆流モデルを安楽死させ、胃を摘出したところ、いずれのラットにも胆汁酸の逆流が見られる胃-空腸吻合部周囲の粘膜に、αアミラーゼ陽性、TFF2弱陽性の膵上皮化生を認めた。膵上皮化生の周囲の腺窩上皮から腺頚部にかけてTFF2が陽性であった。このことから、膵上皮化生は十二指腸液の逆流によるSPEMを伴う胃粘膜損傷に関連して誘導され、さらに膵上皮化生、幽門腺化生は、腺頚部に由来する幹細胞より発生していると考えられた。なお、抗PDX1抗体や抗PTF1A抗体の免疫染色はラットの胃粘膜では安定した染色ができなかったため、本研究では評価はできなかった。これらの結果はDigestive Diseases and Sciences誌に掲載された。(https://doi.org/10.1007/s10620-020-06342-y)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵上皮化生は食道胃接合部でみられることが多く、膵腺房細胞のみで構成されており、cardiac mucosaとともに存在することが多い。申請者らは膵上皮化生の発生に胆汁酸曝露が関与していると考えた。本研究では以下の3項目について検討することにした。①ラット十二指腸液逆流モデルの作成と膵上皮化生の組織発生の解明、②膵上皮化生を誘導する胆汁酸の同定、③ラット胃組織を3D培養システムを用いて初代培養し、胆汁酸刺激を加えて、膵上皮化生を誘導する遺伝子の同定。これらの3つのテーマを各年度につき1テーマずつ行うことにした。本年度では①を行った。2021年度は②を、2022年度は③を行う予定である。現段階では研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上掲のように2021年度は②について検討する計画である、臨床研究として逆流性食道炎がある症例で、食道胃接合部の生検を行う。生検組織において膵上皮化生のある症例とない症例の総胆汁酸の濃度や胆汁酸の分画を解析、比較する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は食道胃接合部から生検検体を採取し、αアミラーゼ抗体やBcl-10抗体を用いて免疫染色を行ない、膵上皮化生の同定をする。また、胆汁酸を採取し、濃度や分画の比較を行う。このための費用として使用する。
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