研究課題/領域番号 |
20K16985
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
和田 康宏 大分大学, 医学部, 客員研究員 (10812125)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵上皮化生 / ラット十二指腸液逆流モデル / 逆流性食道炎 |
研究実績の概要 |
膵上皮化生は食道胃接合部にみられることが多く、膵腺房細胞のみで構成されており、cardiac mucosaとともに存在することが多い。膵上皮化生の発生機序については不明であり、私たちは膵上皮化生の発生に胆汁酸の曝露が関与していると考えた。2020年度はラット十二指腸液逆流モデルを用いて、膵上皮化生の発生過程について明らかにした(Dig Dis Sci. 2021 Apr;66(4):1072-1079.)。2021年度は3D培養を用いた胃粘膜モデルを用いて、胆汁酸と膵上皮化生発生との関連性を明らかにし、関与する遺伝子を同定することを目的とし、研究を継続した。膵上皮化生を誘導する胆汁酸の同定を行うこととし、臨床研究として、逆流性食道炎にある症例で、食道胃接合部の生検組織をした症例では、胃液を採取し、膵上皮化生のある症例とない症例で胃液中の総胆汁酸の濃度や胆汁酸分画を比較することを目的としたが、人の食道胃接合部の生検検体について膵上皮化生が見られる症例が現在のところ十分に集まっておらず、胃液を胆汁酸研究所に委託して胆汁酸分画を解析するところまで至っていない。そこで症例の集積を継続しつつ、以前の生検検体で人の胃粘膜の生検検体で膵上皮化生がどの程度発生するか研究を行った。大分大学医学部消化器内科学講座で1998年1月1日から2019年12月31日までに胃粘膜から採取した生検組織5930例について人での膵上皮化生の発生頻度と患者背景を研究し、論文化して現在BMC Gastroenterologyに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでラット十二指腸液逆流モデルを作製と膵上皮化生の組織発生の解明コントロール(開腹手術のみ)とラット逆流モデル群を作製する。術後30週まで経時的に屠殺し、胃を摘出し、組織学的に評価する。膵腺房細胞に陽性となる抗αアミラーゼ抗体や、膵分化にかかわるとされる抗PDX1抗体や抗PTF1A抗体を用いた免疫染色とともに、SPEMに陽性となるTFF2や幽門腺型の細胞に陽性となるHIK1083と合わせた蛍光二重染色を行い、膵上皮化生の組織発生や起源について検討した。以上はラットでの研究であり、これからは人での膵上皮化生の発生機序について検討することとした。上部消化管内視鏡検査で採取された生検検体のうち、食道胃接合部に膵上皮化生が見られる症例が十分に集積できておらず、膵上皮化生が見られない症例との胆汁分画の比較ができていない。症例の集積を継続していく。しかし、2021年度の研究で胃粘膜の生検組織における膵上皮化生の発生頻度について論文化できている。詳細な結果は投稿中でありここには記載しないが、膵上皮化生は胃の中でも発生しやすい箇所としにくい箇所があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、膵上皮化生を誘導する胆汁酸の同定を行う。臨床研究として、逆流性食道炎にある症例で、食道胃接合部の生検組織をした症例では、胃液を採取し、膵上皮化生のある症例とない症例で胃液中の総胆汁酸の濃度や胆汁酸分画を比較する。胃液は順伸クリニック胆汁酸研究所に委託して胆汁酸分画を解析する。このために症例の蓄積を継続していく。ラット胃組織を3D培養システム(Tissueoid cell culture system)を用いて初代培養し、胆汁酸刺激を加えて、膵上皮化生を誘導する遺伝子を同定する。ラット胃組織をTissueoid cell culture systemにて初代培養後に各種胆汁酸を投与、膵腺房細胞の分化を誘導する胆汁酸を同定する。形態的に膵上皮への分化が確認できれば、胆汁酸を投与していない培養細胞と投与したものからtotal RNAを採取し、タカラバイオ株式会社に委託。Whole Transcriptome解析(次世代シーケンサーによるRNA-seq解析)を行い、膵上皮化生を誘導する(膵外分泌腺への分化に関わる)遺伝子の同定を行う。
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