研究課題
B細胞活性化因子と肝発癌の関係をマウスモデルを使用して明らかにしようとしている。以前に高脂肪食飼育BAFF欠損マウスは高脂肪食飼育野生型マウスよりも脂肪肝や耐糖能が改善することを報告してきた。この高脂肪食により惹起される全身炎症が軽減することは、肝発癌・進展にどのような影響を与えるのかを検討し、近年増加している脂肪肝を基盤とした肝発癌の原因解明の一助とすることを目的としている。野生型(C57BL6/J)マウスとBAFF欠損マウスに、生後2週齢で発癌物質DENを単回腹腔内投与し、生後6週齢より高脂肪食(60% FAT)もしくは通常食で飼育し、発癌の状態を20週、24週、36週時点で検討した。20週と24週齢ではBAFF欠損マウスの方がより野生型に比較して肝腫瘍の合併が多い結果が得られた。またBAFF欠損マウスの肝腫瘍は野生型に比較してより大きかった。得られた肝組織での顕微鏡学的な腫瘍合併率も検討するとともに細胞周期に関する免疫染色を行い、腫瘍増殖能の点について検討している。また、機序の解析に関して、肝(腫瘍部、非腫瘍部)での細胞周期、炎症、脂肪化に関する遺伝子発現をreal-time PCRで検討している。今後マウス肝癌細胞株を用いて肝細胞へのBAFFの直接的な作用をreal time PCRで検証する予定である。次にBAFF欠損マウスは野生型に比較して有意に脾臓が小さく、脾臓・肝臓への浸潤リンパ球中のB細胞の割合が少なかった。このリンパ球の差異が肝腫瘍進展への与える影響をFACSを中心に検討し、B細胞活性化因子の腫瘍環境への影響を解析している。
2: おおむね順調に進展している
モデルマウスの作成が順調に進んでいるため。機序の解析ではPCR arrayの結果が一部矛盾した結果もあり、検討し直している部分もあるが、概ね予定通りの進行状況と判断している。
機序の解析に必要な腫瘍を合併したモデルマウス作成を継続しながら、得られた肝組織で発癌に関する因子(特に炎症、細胞周期)をPCRを用いて解析を行う。また脾臓と肝臓に浸潤したリンパ球のFACSを継続し、肝発癌を増悪させる腫瘍環境にかんする検討を追加する。また、マウス肝癌細胞株を用いてin vitroの実験を検討している。mouse recombinant BAFFをHepa1-6に添加し、肝細胞内での腫瘍増殖に関する遺伝子発現を比較する予定である。
産休・育児休暇取得に伴い研究中断していたため、次年度使用額が生じた。またCOVID-19感染蔓延により国内外学会への参加が難しく、旅費の使用ができなかった。10月より研究再開しているが、次年度も引き続き海外学会への現地参加は難航する見込みがあり、旅費はFACSやreal time PCRの試薬など物品費に経費を変更し使用する計画である。
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