研究実績の概要 |
近年増加している脂肪肝を基盤とした肝発癌の原因解明の一助とすることを目的とし、本研究ではB細胞活性化因子(BAFF)と肝発癌の関係をマウスモデルを用いて明らかにしようとしている。 野生型マウスとBAFF欠損マウスに、生後2週齢で発癌物質DENを単回腹腔内投与し、生後6週齢より高脂肪食(60% 脂質)もしくは通常食で飼育し、20週、24週、36週時点で肝臓の担癌状況を検討した。高脂肪食群の36週齢では全例に腫瘍を認める一方、24週齢ではBAFF欠損マウスの90%、野生型の42%、また20週齢ではBAFF欠損マウスの53%、野生型の33%で肝腫瘍合併を認め、有意にBAFF欠損マウスで高い腫瘍合併率であった。20週齢の肝臓での顕微鏡学的腫瘍合併も、BAFF欠損マウスで60%、野生型で7%とBAFF欠損マウスで多い結果が得られた。またPCNA染色で腫瘍内陽性細胞割合もBAFF欠損マウス肝で多い傾向であり、細胞増殖が亢進していることが示唆された。 この機序としてBAFF欠損マウス腫瘍部では野生型に比して、CDK6やCyclin D1 遺伝子発現亢進を認めた。一方TNFαやIFNγ, VEGFαなどに有意差は認められなかった。また高脂肪食24週齢の肝臓浸潤細胞を解析したところ、BAFF欠損マウスは野生型に比し有意にB細胞が少ない一方で、骨髄由来抑制細胞、特にGr-1 low分画が有意に多い結果がえられた。BAFFが骨髄由来抑制細胞への分化を誘導している可能性について次に検証した。野生型マウスの骨髄細胞をGM-CSFを添加し培養すると骨髄由来抑制細胞に分化することを確認し、そこにBAFFもしくはPBSを添加し培養した。骨髄由来抑制細胞の割合に有意差は認められず、BAFFの骨髄細胞への直接的な作用は否定的であった。
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