研究実績の概要 |
切除不能進行肝細胞癌に対しLenvatinibは高い抗腫瘍効果を認める薬剤だが、有害事象により継続不能な症例を多く経験する。分子標的薬の治療効果に加えて継続性を事前に予測することが可能であれば、肝細胞癌治療法選択にとって極めて有用である。 切除不能進行肝癌に対し1st lineとしてLENを導入し治療前後(治療前・治療開始4週後・8週後・12週後の4ポイント)で血漿マイオカインをマルチプレックス測定し、最終的に解析可能な55症例を対象とした。マルチプレックス測定した血漿マイオカイン12種のうち、測定結果から5種の候補を絞り込み(BDNF・FABP・FST・IL-6・LIF)経時的な変化を検討したが、治療前と比較し治療後に有意な変化は認められなかった。PFSとの関連性を検討したところ治療前BDNFとPFSに関連性が認められた。治療前血漿BDNFのbest cut off valueを算出し(1290pg/ml)、2群で比較すると治療前BDNF高値群は低値群と比較し有意にPFSが延長していた(5.1ヶ月 vs. 11.5ヶ月, p = 0.038)。BDNF高値群と低値群の背景因子を比較したところBMI・腫瘍進行度・肝予備能に有意差は認められなかったが、BDNF低値群では握力が低く・減量開始例が多い傾向を認めた(p < 0.05)。LEN治療効果との関連性が報告される8w-RDIはBDNF高値群で95.0%に対し、低値群では67.5%であり治療効果の指標とされる8w-RDI > 70%を達成できている症例ではBDNFが有意に高値であった(p = 0.003)。 本検討において治療前血漿BDNFとLEN治療効果に差を認めた。また、血漿BDNFとサルコペニア・RDIとの関連性も示唆された。血漿BDNFがTKIの忍容性予測因子として有用な可能性がある。
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