研究課題
肝臓手術の成功には虚血再灌流障害の制御が不可欠である。LMIR4はペア型免疫受容体LMIRファミリーに属する活性化型受容体であり、主に好中球に発現する。セラミドを認識する抑制型受容体LMIR3とLMIR4の細胞外領域の相同性は高いが、LMIR4リガンドは不明である。現在、LMIRは脂質を認識するペア型免疫受容体であると想定されている。本研究の目的は、LMIR3とLMIR4に着目して肝臓虚血再還流障害の分子機序を解明することである。野生型とLMIR3欠損マウスに肝臓虚血再灌流障害を誘導しても、再灌流後の血清GOT・GPT値(肝細胞障害を反映する)や炎症性サイトカイン量及び肝臓に集積する好中球数などに有意な差は認められなかった。一方、野生型とLMIR4欠損マウスに肝臓虚血再灌流障害を誘導すると、野生型マウスと比較してLMIR4欠損マウスでは再灌流後の血清GOT・GPT値や炎症性サイトカイン量及び肝臓に集積する好中球数の減少が認められた。さらに、肝臓組織ではアポトーシス/ネクローシスをおこした肝細胞の割合の著明な低下が認められた。また、好中球を欠損するマウスでは肝臓虚血再灌流障害が軽減することを確認した。一方、野生型マウスの虚血再灌流障害の肝臓組織でLMIR4を発現する細胞の主体は集積する好中球であることを示した。従って、LMIR4を欠損すると、虚血再灌流障害により肝臓に集積する好中球が減り、肝臓の障害が軽減すると考えられた。また、肝臓に集積する好中球のLMIR4は障害を受けた肝臓組織で増加する何らかの脂質を認識する可能性が示唆された。一方、セラミドに類似した脂質や虚血再灌流障害を受けた肝臓組織由来の脂質を固相化したプレートを用意して、LMIR4の細胞外領域を利用する結合・レポーターアッセイを行ったが、現時点で、LMIR4のリガンド脂質の同定に至っていない。
すべて 2021
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Transpl Immunol.
巻: 67 ページ: 101405
10.1016/j.trim.2021.101405.