研究課題/領域番号 |
20K17009
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
河端 秀賢 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50548691)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | IPMN / GNAS / Notchシグナル / KRAS |
研究実績の概要 |
IPMNは乳頭状増殖と豊富な粘液産生を特徴とし、嚢胞状構造を呈する。初期発生におい て、二つのドライバー遺伝子KRAS及びGNASが重要な役割を担う。 GNAS変異型細胞は、ゲノム編集により得たGNAS野性型細胞と比較して、PKA、CREB及び VASPのリン酸化が強く、古典的PKA経路の活性化が確認された。オルガノイド培養・Xenograftでは、GNAS変異型細胞でのみ粘液貯留を反映した泡状に膨らんだ特徴的な形態がみられ、GNAS野生型細胞は、充実性の集塊を呈した。また、GNAS野生型細胞の腫瘍増殖が速いことが示唆され、変異型GNASはEMTを抑制していた。 GNAS変異型細胞において、ERKのリン酸化及び核内βカテニンの発現がGNAS野生型細胞に比較して亢進していることを見出した。このことから、同変異がERKやWntシグナルの活性化においてKRASと相乗的に働くことが示唆された。続いて、 KRAS変異に伴い発生する膵癌前駆病変の悪性化に重要であることが知られているNotchシグナルの関連を確認した。結果、GNAS野生型細胞と比較して、GNAS変異型細胞では同経路の活性化指標とされるNotch intercellular domain(NICD)の核内発現が顕著に増加することが明らかとなった。Notchシグナルを介し、KRASの暴走にブレーキをかけていることが新たに分かった。また膵IPMNではGNAS変異によりMUC2, 5B, 5ACを中心としたムチン産生能が亢進し、特徴的な膵管内の豊富な粘液産生を伴う嚢胞状形態を誘導する。 このGNASの癌抑制シグナルを理解することはIPMN関連膵癌の診断や治療戦略に一石を投じると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
論文がアクセプトされました。 Mutant GNAS limits tumor aggressiveness in established pancreatic cancer via antagonizing the KRAS-pathway J Gastroenterol. 2022 Mar;57(3):208-220. doi: 10.1007/s00535-021-01846-4. Epub 2022 Jan 11. PMID: 35018527
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究継続を行い、GNAS変異がヒト膵癌の進展経路をどのように調節するかを明らかにし、GNAS変異が関与する分子経路をさらに特定し、膵癌に対する個別化治療に役立つ新規情報を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に解析費用が予定より多く必要となる見込みのため、令和3年度の残高を充てる予定です。
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