研究課題/領域番号 |
20K17016
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
薛 徹 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (40837184)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セロトニン / 肝障害 |
研究実績の概要 |
マウスでの部分肝切除による急性肝障害モデルマウスを用いて、小腸のセロトニン産生の律速酵素であるTPH-1発現の変化を測定することにより、肝障害前後でのクロム親和性細胞でのをセロトニン産生を検証した。さらにカプサイシンを用いて求心性の交感神経伝導路を遮断し、神経ネットワークの関与を検討した。また、血中セロトニン濃度の推移を経時的に測定した。予備検討と同様に、部分肝切除では術後の肝再生が亢進し、カプサイシンにより再生が抑制された。小腸では、肝部分切除2日後に肝部分切除群で有意にTPH-1の発現が有意に上昇していた。一方で、カプサイシンを用いて求心性の神経伝道路を遮断すると、TPH-1の増加は認めず、Sham operationと同様のレベルに抑制された。この変化は、術後7日にはSham operation群、部分肝切除群、カプサイシン併用部分肝切除群で差が認められなくなった。血中のセロトニンは大半が血小板を担体として血中に存在し、血漿中に遊離しているものは僅かである。このため、血小板を分離し血小板中のセロトニンの変化をELISAを用いて測定した。血小板中のセロトニン値は術後2日から7日にかけて部分肝切除群およびカプサイシン併用部分肝切除群で、Sham operation群と比較して低下傾向を認めた。残肝のセロトニン受容体(HTR2A, HTR2B)に関する検討では、術後のmRNA発現、および免疫染色での細胞表層発現に変化を認めなかった。以上から、肝切除による小腸でのセロトニン産生の亢進が見られる一方で、血中セロトニン値は上昇を認めず、むしろ低下傾向を示したことから、セロトニンの肝再生に伴う消費を示唆しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では【研究実績の概要】に示した一連の実験を、部分肝切除のみならず、NASHモデルなどの他の肝障害条件でも検討する予定であったが、1)肝臓でのreceptor発現の検討に使用するprimerおよび抗体の条件検討に時間を要したこと、2)新型コロナウイルス感染症の流行に伴い他業務のエフォートが増したこと などにより当初の予定より若干の遅れを認める。
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今後の研究の推進方策 |
他の肝障害条件下でも同様に血中セロトニン値の推移やレセプターの発現を検討する。また、セロトニン受容体のagonist、antagonistを使用し神経ネットワークー小腸でのセロトニン産生変化ーセロトニン濃度変化の肝再生に与える影響に関して裏付けを進める。また、ハイドロダイナミック遺伝子導入法を用いたセロトニンレセプター発現調整による肝再生の変化を検討する。これらにより、多面的にセロトニンと神経ネットワークの肝病態への関 与を明らかとしセロトニンの診断や治療への応用を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の若干の遅延、及び条件検討に費やす時間が長引いたことにより、各種動物モデルの作成に使用する予定の金額が翌年度に繰越となり、次年度使用額が生じた。今後、当初の予定の通りに使用していく予定である。
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