本研究は細胞傷害活性を有するCD4陽性キラーT 細胞(CD4+CTL)の肝癌腫瘍組織内での動態を明らかにするものである。これによってCD4+CTLを誘導するケモカイン制御を用いた新規の抗癌治療法を確立することを目的としている。 本年度はこれまでに確立したマウス肝癌細胞株BNL 1ME A.7R.1 (BNL)のマウス同所性肝癌モデルを用いて、経時的に肝腫瘍と周囲肝組織を採取し、 CD4+CTLおよびその他の免疫細胞の局在性と構成細胞の変化に関して、腫瘍進展の各経過において検討ができるようになった。その結果、肝癌領域と背景肝でCD4とCD8陽性細胞の局在に差異があることが分かった。また、肝内には形態の異なる2種のマクロファージが存在していることが判明し、それらの局在の違いから、それぞれが肝腫瘍進展に異なる役割を有している可能性が示唆された。また、ヒト肝癌患者切除標本組織に関して、同時7色の多重染色を行えるTSA免疫組織化学染色を用いて、CD4+CTL、CD8+CTL、ヘルパーT細胞、制御性T細胞(Treg)、マクロファージといった免疫細胞の腫瘍内局在とポピュレーションを解析した。さらに、近年、肝癌領域でも実臨床において免疫治療が行われているが、免疫療法の有効である症例とそうでない症例が存在する。肝癌治療中の患者血中の循環腫瘍細胞を検討したところ、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療効果の有効性の有無により症例を分類した際、ICI投与前後での循環腫瘍細胞に差異があることが判明した。
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