研究課題/領域番号 |
20K17019
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山崎 智生 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (90795684)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HLA / eQLT / IBD / UC / CD |
研究実績の概要 |
本研究の目的は消化器病領域、自己免疫性疾患患者のexpression quantitative trait loci(eQTL)における遺伝子多型と実際のHLA発現量を検討し、疾患発症及び病態との関連を明らかにすることである。本年度は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎(UC)160名、 クローン病(CD)275名)患者からDNA検体を採取し、eQTL SNPであるrs9264942がHLA-Cの発現を制御するかどうかを検討した。また炎症性腸疾患(IBD)のrs2270191、rs3132550、rs6915986の3つのSNPを含む4つのSNPハプロタイプが日本人のIBDと関連するかを検討した。CD3e+CD8a+リンパ球におけるHLA-Cの発現は、rs9264942のTT遺伝子型よりもCCまたはCT遺伝子型の方が有意に高いことが明らかになった。さらに4つのSNPのうちTACCハプロタイプは、潰瘍性大腸炎(UC)発症と関連し、クローン病(CD)とは関連しなかった。またCGTTハプロタイプでは、UCに対する有意な防御能を有したが、CDに対する防御能は有意ではなかった。一方、CGCTハプロタイプではUCに対する防御能の有意差は消失し、CDに対する防御能は有意であった。以上の結果から、日本人において、eQTL SNPであるrs9264942がHLA-Cの発現を制御していることが示唆された。また、強い連鎖不平衡状態にある4つのSNPは、IBDの感受性と疾患の転帰に関連する特定のHLAハプロタイプ(HLA-C*12:02~B*52:01~DRB1*15:02)の代理マーカー候補である可能性が示唆された(Suzuki et al. Sci Rep. 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症性腸疾患については予定していた患者の検査が終了しており、臨床データおよび病態予後との関連性につき更なる解析が可能な状態である。また自己免疫性肝疾患である自己免疫性肝炎(AIH)約300例および原発性胆汁性胆管炎(PBC)約450例についてもDNA抽出は既に完了しており、検討すべきHLA分子発現量と関連するcis-eQTLの収集も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫性肝疾患である自己免疫性肝炎(AIH)約300例および原発性胆汁性胆管炎(PBC)約450例についても炎症性腸疾患と同様の検討を行う。遺伝子型によりmRNA発現量の相違が認められたならば、HLA分子特異的なモノクローナル抗体を用いてPBLの細胞表面をフローサイトメトリー法で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度施行したHLA-Cの測定について想定より費用がかからなかったため。自己免疫性肝疾患を含む次年度の残りの症例の解析について次年度使用額を充てることができるため。
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