研究実績の概要 |
HBV感受性細胞株であるHepG2-hNTCP-C4に、ドキシサイクリン誘導型Cas9を遺伝子導入した細胞株であるHepG2-hNTCP-iCas9を樹立した。HBVゲノムのopen reading frame内にあるX領域、P領域、C領域を標的としたgRNA(HBV-gRNA)並びにHBVやヒトゲノムを標的としないコントロールgRNA(Cont-gRNA)を複数設計し、レンチウイルス型の発現ベクターにクローニングを行い、HepG2-hNTCP-iCas9に遺伝子導入を行った。HBV感染4日後にドキシサイクリンを投与し、Cas9をHBV感染後に発現させると、培養上清中のHBV DNA,HBs 抗原,HBe 抗原, 細胞内プレゲノムRNA(pgRNA),cccDNAはHBV-gRNA導入群でCont-gRNA導入群と比し培養上清中HBV DNA量、HBs抗原量、HBe抗原量、細胞内pgRNA量、cccDNA量が有意に減少した。また初代培養ヒト肝細胞に対してもHBV感染後にレンチウイルスによるCRISPRの導入を行うと、HBV-gRNA導入群でCont-gRNA導入群と比し培養上清中HBV DNA量、HBs抗原量、HBe抗原量、細胞内pgRNA量、cccDNA量が有意に減少した。また、HepG2-hNTCP-iCas9の検討で同定したcccDNA修復に関与する分子候補について、DNA修復関連タンパクの1つであるPARPに着目して検討した。HepG2-hNTCP-iCas9において、PARP1 siRNA、 PARP2 siRNAやPAPR阻害薬であるオラパリブ単独投与では抗ウイルス効果は認められなかったが、いずれにおいてもCRISPR/Cas9との併用治療を行うとCRISPR/Cas9単独治療による細胞内pgRNA量の低下を有意に増強した。
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