食道癌の早期発見と治療において、腫瘍診断や深達度・脈管浸潤の正確な判定が課題である。この課題の克服のため食道癌のより良い補助的診断バイオマーカーを同定することが急務となっている。本研究では,表在型食道扁平上皮癌の内視鏡切除前に得られた腫瘍組織と隣接する正常組織のmiRNA発現を比較し、表在型食道癌で特異的に発現しているmiRNAを同定した。クラスタリング分析により、2つの組織グループ間で発現の差異が明らかになり、48のmiRNAが同定された。組織では隣接する正常組織と比較して、27のmiRNAが高発現し、21のmiRNAが低発現していた。またmiRNAの発現と食道癌の深達度および脈管侵襲に関連するmiRNAについての発現プロファイルを行いmiRNA signatureを樹立した。癌と密接な関係のあるmiRNAとして、miR-21-5p、miR-146b-5p、miR-210-3pの発現を、凍結組織を用いてリアルタイムPCR法で評価した。表在型食道癌の腫瘍組織では、特にmiR-21-5pとmiR-146b-5pが高発現し、miR-210-3pの低発現していた。合成miR-21-5 mimicの導入で癌細胞株の細胞増殖が促進されており、miR-21-5pの過剰発現が食道癌初期の細胞増殖および浸潤への関与することを示唆した。miR-210-3p阻害剤ではKYSE-850の細胞増殖が抑制された一方、合成miR-146b-5pの導入では細胞増殖・浸潤に影響しなかった。本研究によって、癌の次世代早期診断マーカーであるマイクロRNAの表在型食道癌における発現パターンを明らかにした。これらのmiRNAは診断バイオマーカーとして役割を果たし、初期の腫瘍増殖・浸潤のメカニズムに関与するものと考えられた。
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