研究課題/領域番号 |
20K17025
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
有木 晋平 大分大学, 医学部, 医員 (40849634)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケモカイン / CCL20 / 炎症性腸疾患 / ゲノム編集マウス / 疾患モデルマウス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、本講座で作成したCCL20欠損マウスを用いて、IBD病態形成に関するCCL20の生理的役割を明らかにすることである。 まず、CCL20欠損マウスを用いて、定常状態における腸管組織のリンパ球の局在を解析し、CCL20の腸管組織の恒常性における生理学的役割を明らかにする。我々はすでに野生型マウス定常状態のパイエル板でのCCL20の発現が高いことと、CCL20欠損マウスのパイエル板が低形成となることを見出しているので、パイエル板よりリンパ球を単離し、フローサイトメトリー法によりリンパ球のサブセットの割合や局在を解析した。CCL20欠損マウスと野生型マウスのパイエル板中のB細胞、T細胞の割合を比べたところ共に大きな差はみられなかった。しかしながら、CCR6+LTi様ILC3と呼ばれる自然リンパ球の割合は野生型マウスに比べて欠損マウスで低い傾向が見られた。CCR6+LTi様ILC3は2次リンパ節の形成に関与していることが知られているため、CCL20欠損マウスのパイエル板の低形成がこれによるものなのか今後の課題である。また、パイエル板中のB細胞の割合に変化はみられなかったが、IgA産生B細胞の割合は野生型マウスに比べて欠損マウスで低い傾向が見られた。さらに、T細胞のサブセットの1つであるインターロイキン17産生ヘルパーT細胞(Th17細胞)の割合も野生型マウスに比べて欠損マウスで低い傾向が見られた。Th17細胞はIBDの病態形成への関与が示唆されており、腸管IgAは腸内常在細菌の制御に重要なことが知られているため、CCL20欠損によるこれらの低下が、腸炎の病態形成に関与するのか今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、CCL20欠損マウスを用いて、定常状態における腸管組織のリンパ球の局在をパイエル板に着目して解析した。CCL20欠損マウスのパイエル板よりリンパ球を単離し、フローサイトメトリー法によりリンパ球のサブセットの割合や局在を解析した。CCL20欠損マウスと野生型マウスのパイエル板中のB細胞、T細胞の割合を比べたところ共に差はみられなかったが、CCR6+LTi様ILC3、 IgA産生B細胞、Th17細胞の割合は野生型マウスに比べて欠損マウスで低い傾向が見られた。また、腸管粘膜固有層からリンパ球を安定的に分離する技術的手法を確立するための基盤的実験を行った。gentleMACSを使用することで安定的なリンパ球の分離を可能にした。さらに、腸炎モデルマウスを作製するための基盤的実験を行った。トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)及び、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による腸炎の誘導に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、パイエル板のさらなる解析に加え他の腸管組織での定常状態におけるリンパ球の局在を解析し、CCL20の腸管組織の恒常性における生理学的役割を明らかにする。そのため、腸間膜リンパ節、粘膜固有層、腸管上皮細胞よりリンパ球を単離し、フローサイトメトリー法によりリンパ球のサブセットの割合や局在を解析する。 さらに、CCL20欠損マウスを用いて腸炎モデルを作製し、その病態をCCR6欠損マウスと比較解析する。腸炎はトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)または、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いて誘導し、病態スコア、体重変化、大腸の長さの変化、サイトカイン発現量、浸潤細胞の種類と局在及び病理所見などを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
gentleMACSを使用することで安定的なリンパ球の分離が可能になり、経費の節約につながった。また、腸炎の誘導の検討についても順調に進んでおり、経費を節約することができた。当該助成金は請求した助成金と合わせ、主に消耗品および実験動物飼育管理費等として次年度に使用する予定である。
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