B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)の排除には、HBV特異的CD8+T細胞の免疫寛容の回避すなわち機能的なCD8+T細胞応答の誘導が重要である。我々は予備実験において、免疫寛容となったHBV特異的CD8+T細胞が、T細胞の共刺激シグナルであるOX40分子を高発現していることを見出した。そこで本研究は、「OX40の刺激がHBV特異的CD8+T細胞を抗原依存的に活性化し、HBVを持続的に抑制するか」を解明することを目的に行なった。 研究初年度には、OX40シグナル刺激のHBV特異的T細胞応答およびHBV発現への影響を主に検討した。OX40シグナルを刺激抗体で活性化すると、養子移入したHBV特異的CD8+T細胞は、肝臓内で機能的なT細胞へと一過性に分化し、肝臓内HBV-mRNAの発現を抑制することを見出した。 研究最終年度となる2年目には、その抗HBV効果の持続性を検討した。T細胞を養子移入すると同時にOX40シグナルを刺激すると、血清HBs抗原はOX40抗体の投与7日後から有意に減少し始め、21日後にはOX40抗体投与前の1000分の1以下にまで減少した。さらに、OX40抗体投与180日後まで、血清HBs抗原および肝臓内HBV-mRNAの抑制の持続性が確認できた。 本研究を通じて、OX40シグナルの刺激により、HBV特異的CD8+T細胞の機能的分化が誘導されること、さらには、その一過性の誘導によりHBV-mRNAの転写が抑制され続けていることが示された。本研究は、2年目途中にて、研究代表者の海外留学により一時中断する。研究再開後には、免疫寛容となるT細胞がOX40を発現するメカニズムや、一過性のT細胞活性化が持続的なHBV抑制を誘導するメカニズムを解析する予定である。
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