研究課題
フォンタン手術は、単心室先天性心疾患の患者に対する心臓の修復手術で、上大静脈は遠位右肺動脈に吻合し、いわゆるフォンタン循環が形成されます。フォンタン関連肝疾患(FALD)は、特に長期の肝静脈うっ血と低酸素症の患者に発症すると考えられます。組織学的解析で、フォンタン手術の30年後に患者の43%が肝硬変に進展すると報告されます。非侵襲的マーカーに関しては、ヒアルロン酸(HA)およびIV型コラーゲン7S値、ASTと血小板比(APRI)、fibrosis-4(FIB-4)indexが、FALD患者の肝線維化を反映していると報告されます。肝疾患患者の予後の推定に使用される末期肝疾患(MELD)スコアのモデルは、FALD患者はワルファリンで治療されていることが多く使用できないため、PT-INRを除いたMELDスコア(MELD-XIスコア)を用います。今回我々は、Fontan術後患者を集積し、患者血清を遠心分離・抽出し、血清の肝線維化マーカーであるヒアルロン酸、IV型コラーゲン-7S、プロコラーゲンIIIペプチド (P-III-P)、M2BPGi (Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)の測定を行っていますが、さらにMELD-XIスコアを線維化診断の検討に加えました。さらに、フォンタン手術後には良性腫瘍[限局性結節性過形成(FNH)および肝細胞腺腫]および肝細胞癌(HCC)の合併が報告されています。全国調査では、肝硬変またはHCCが31 / 2,700例(1.15%)で報告されました。我々はFALD-HCCの臨床像とそのリスク因子を明らかにするために、循環器小児科と併診し半年毎の血液検査と画像検査を行っています。HCC発症例に関して、血液検査値、心エコー検査、心臓カテーテル検査値を検討し、発癌リスク因子を同定するために検討を行いました。
2: おおむね順調に進展している
肝癌合併例で血液検査値、心エコー検査、心臓カテーテル検査値を検討し、発癌例では有意にヒアルロン酸値とFIB-4 index高値であることが分かりました。また、総ビリルビン値やMELD-XIスコアが高い傾向にありました。肝癌のリスク因子として多脾症の合併とMELD-XIスコア高値が挙げられ、現在、論文投稿中です。
FALDおよびFALD-HCCの血液検査値、心エコー検査、心臓カテーテル検査値を検討しつつ、今後、生命予後に関与するマーカーの検討も行う予定であります。
経費の使用は症例集積後一度に行う予定で次年度に繰り越しとなりましたが、現在、稟議書を提出中で研究に支障はありません。
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