研究実績の概要 |
Fontan手術は先天性心疾患に対する心臓の修復手術で、様々な術式の改変が長期生存を可能にしました。一方、Fontan associated liver disease (FALD)として報告される肝障害や肝細胞癌 (HCC)を含む肝腫瘍を合併することが問題となっています。肝疾患診療では、肝線維化の程度の正確な診断は、予後や合併疾患の推定のために極めて重要ですが、抗凝固・血栓薬の内服や低心機能、合併する奇形などにより線維化の程度の把握に難渋します。今回我々は、Fontan術後患者の血清を遠心分離・抽出し、血清の肝線維化マーカーであるヒアルロン酸、IV型コラーゲン-7S、P-III-P、M2BPGi (Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)の測定を行うとともに、ワルファリンの影響を考慮しPT-INRを除いたMELDスコア(MELD-XIスコア)を検討に加えました。さらに、循環器小児科と連携し、心臓カテーテル検査による心機能パラメータと肝線維化や肝腫瘍の関連を検討しました。 計1117例の患者 (女性 538例、48.2%)が平均3.4歳で最初のFontan手術を受け、追跡期間10.3年で67例(6.0%)が死亡しました。181例 (16.2%)に肝線維化が疑われ、67例 (6.0%)が肝硬変、54 (4.8%)に限局性結節過形成および7例(0.6%)にHCCが合併しました。多変量解析では、高中心静脈圧 (CVP) (HR、1.28, 95% CI 1.01 ~ 1.63) /3mm Hg; p=0.042) および重度の房室弁逆流(HR、6.02, 95% CI 1.53 ~ 23.77, p=0.010)が肝疾患発症の独立したリスク因子と考えられました。CVPの低下や房室弁逆流の治療的介が進行した肝疾患の発生率に影響するかさらに検討が必要と考えられます。
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