研究実績の概要 |
本年度(令和2年度)は申請書に記載した研究内容に従って実験を行った。 ①HCC細胞株(Huh7やHep3BHep3B等)に対してlenvatinib,sorafenibを低濃度で長期間培養し、それぞれの耐性細胞を作成した。耐性細胞のIC50はlenvatinib、sorafenibともに親細胞株と比較して約2倍の濃度となった。②作成した耐性細胞におけるCSCs-populationの変化をFACSを用いたCD44/CD133の二重染色により親細胞株と比較検討した。その結果、sorafenib耐性細胞は親細胞に比べてCD44high/CD133high細胞が増加したが、lenvatinib耐性細胞では逆に減少していた。③作成したsorafenib,lenvatinib耐性細胞,親細胞の3種類をヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍形成能を比較検討した。その結果、それぞれの耐性細胞は親細胞に比較して優れた腫瘍形成能を有していた。また、耐性細胞間では腫瘍形成能に有意な差は認められなかった。 これらの結果から、特にlenvatinib耐性細胞ではCD44/CD133以外の遺伝子や機序が薬剤耐性や腫瘍形成に関与していることが示唆された。④作成したsorafenib,lenvatinib耐性細胞,親細胞の3者間の遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイにより検討した。その結果、各薬剤耐性に特異的な遺伝子と共通する遺伝子の候補を複数種類ピックアップすることができた。現在はピックアップした複数遺伝子について、siRNAを用いたノックダウンや過剰発現細胞を作成し、薬剤耐性やCSCsマーカー発現に与える影響を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も申請書に記載した内容に従って研究を実施する予定である。 作成した耐性細胞を用いて3次元培養(浮遊培養、biomaterialを用いた培養)を行い、①細胞塊の形状や構成細胞数・体積を蛍光顕微鏡を用いた3D再構築法を利用して比較する。②実際の細胞塊内の細胞状態を生死細胞染色キット(蛍光顕微鏡利用)で、ホルマリン固定後 の切片を用いて増殖細胞(Ki67)やCSCsマーカー、分化マーカーの発現(AFP:肝細胞, CK19: 胆管上皮,等)を免疫組織染色によって検討する。③腫瘍塊における候補遺伝子発現等を2次元培養時と比較検討する。④候補遺伝子の恒常的過剰発現・ノックダウン(ノックアウト)細胞を作成し、細胞塊形成への影響を検討する。
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