肝癌細胞株Huh7細胞において、レンバチニブ耐性細胞株を用いて、肝細胞癌の重要な治療標的であるVEGFシグナルに着目した。耐性細胞株におけるVEGF分泌能を測定すると、コントロールと比較して、レンバチニブ耐性細胞株ではVEGFの分泌能が上昇していた。Wound-healing assayを行うと、コントロールと比較して、レンバチニブ耐性細胞株では24時間後、48時間後のwound closureは上昇していたが、マルチチロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブを使用すると、上昇していたwound closureは低下した。また血管内皮細胞株HUVECを用いたTube formation assayを行うと、コントロールと比較して、レンバチニブ耐性細胞株ではjunction数、segment数、および総長は上昇していたが、カボザンチニブを使用すると、上昇していたjunction数、segment数、および総長は低下した。進行肝細胞癌患者におけるレンバチニブ投与後(n=20)の血清VEGFを測定すると治療前と比較して血清VEGFは上昇していた。また進行肝細胞癌患者におけるソラフェニブ、レゴラフェニブ、レンバチニブ投与前および病勢増悪後のVEGF-A遺伝子発現を比較するとレンバチニブ投与例においてVEGF-A遺伝子発現が投与前から病勢増悪後にかけて上昇していた。FGF19・FGFR4シグナルの強力な阻害は、マルチチロシンキナーゼ阻害薬による抗腫瘍効果に重要である。また血清FGF19濃度は、ソラフェニブ投与患者における治療効果予測、生存予測のマーカーとして機能する可能性がある。ソラフェニブ耐性獲得後はFGF19・FGFR4シグナル阻害が耐性克服に重要で、レンバチニブ耐性獲得後はより強力なVEGFシグナル阻害が耐性克服に重要である可能性がある。
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